ロシア戦車が惨敗した理由(下)気になるプーチン政権の「余命」その3
Japan In-depth / 2022年5月25日 18時0分
▲写真 イラク軍のロシア製T-72戦車(2008年5月11日 バグダッド) 出典:Photo by Robert Nickelsberg/Getty Images
まず、開戦に先駆けてエジプト軍が装備していたT-72を試験してみたところ、主砲の有効射程距離が、米軍のM1戦車のそれより1000メートルほども短いことと、装甲も前回紹介した複合装甲ではなく、単なる鋼板であることが明るみに出た。もっとも、この時の米軍関係者の反応はと言えば、
(やはりそうだったのか)
などと、特に驚きはなかったと伝えられる。実はこのように、あえてスペックを落とした「モンキーモデル」を輸出するのは、ソ連邦の常套手段だとささやかれていたのだ。
ただ、ソ連邦地上軍に配備されているT-72でも、この時点ではM1の敵ではなかっただろう、とも言われていた。
まず、APFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)が実用化された結果、避弾経始が意味をなさなくなってしまった。避弾経始については(上)で説明させていただいたが、APFSDSというのは、ダーツのような細い弾芯を高速で命中させるもので、命中した瞬間に先端がマッシュルーム状に潰れながら運動エネルギーで装甲を貫いて行く。つまりは斜面や曲面で受けようが、その威力を減殺することはできないのだ。
なおかつ、特長であったはずの自動装填装置が逆に弱点となってしまった。こちらも(上)で述べたが、もっとも被弾率が低い車体底部に砲弾を並べることで安全性を担保できるはずであったのだが、装甲を貫かれてしまった場合には、砲弾が一斉に誘爆してしまう。その際に乗員としては、
「1秒以内に車外に脱出するか車内でミンチにされるかの二択しかない」
そうである。本当のところは、APFSDSの弾芯には劣化ウランが使用されており、想像を絶する高熱の放射炎(いわゆるメタルジェット)が車内に吹き込むので、乗員が1秒も生存するのは不可能と思われるが、その話はさておき。
イラク軍のT-72について、米兵は当初普通に「タンゴ・セブン・ツー」と呼び習わしていたが、被弾した戦車の砲塔が真上に吹き飛ぶ光景を幾度も見て、ついには「Jack in the box=びっくり箱」という渾名で呼ぶようになった。
私見ながらこの問題も、かなり早い段階で西側の知るところとなっていたのではないかと考えられる。たとえばM1だが、あえて自動装填装置を採用せず、砲塔後部に隔壁のついた弾薬庫を設けているが、こうすることで、たとえ被弾しても「びっくり箱」となる可能性は低く、逆に乗員の生存確率を高めている。フランスのルクレール、ドイツのレオパルド3など自動装填装置を採用した戦車もあるが、乗員と弾薬との間には、やはり隔壁が設けられている。
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