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福島県の医師不足は改善されたのか その2

Japan In-depth / 2022年6月1日 7時0分

東日本大震災でお付き合いが始まり、顧問を務めているときわ会常磐病院も興味深い存在だ。この病院は泌尿器科が売りだが、2020年度の泌尿器科患者数は福島県内1位、全国で13位だ。最近は泌尿器科以外の診療にも手を拡げている。例えば、2018年、尾﨑章彦医師が南相馬市から異動して以降、乳腺治療の規模を拡張している。2020年に治療したのべ患者数は5,052人で、2018年の1,642人から急増した。いわき市内ではトップ、福島県内でも4位だ。尾﨑医師は37才。東京大学医学部を卒業後、福島県に飛び込んだ。これから成長が期待できる世代だ。現在、常磐病院には、尾﨑医師以外にも、外科の澤野豊明医師や血液内科の森甚一医師など、実力ある若手医師が集まり、診療実績を伸ばしている。





彼らが常磐病院での勤務を希望するのは、医師不足の地域なので、やる気さえあれば、多くの症例を経験出来ることに加え、常磐病院の支援により、臨床研究を行い、英文論文もかけるからだ。常磐病院が発表した英文論文数は、2013年の1報から21年には69報に増加した(図1)。加藤茂明・元東京大学分子生物学研究所教授を招聘し、「先端医学研究センターRIIM」を開設したことや、積極的に医学生を受け入れ、彼らに診療見学や臨床研究の機会を与えたことが大きい。その中の一人である東北大学医学部の村山安寿君は、尾﨑医師の指導の下、6報の英文論文を発表した。その中には『キャンサー・セル』や『ヘパトロジー』などの超一流誌での発表もある(写真)。尾﨑医師は、このような実績が評価され、福島県立医科大学の特任教授にも就任した。いわきで働きながら、福島県立医大の学生を指導している。









▲【表1】常磐病院が発表した英文論文数 出典:筆者作成





常磐病院には厚労省も注目しており、今春、同省は、常磐病院を基幹型臨床研修病院に認定した。日本で最も規模が小さい基幹型臨床研修病院の一つだ。ただ、医学生からは大きな注目を集めている。二名の定員に多数の医学生が応募し、福島県立医科大学と杏林大学卒業の医学生が採用され、研修を始めている。





常磐病院のあり方は、地域医療を考える上で一つのモデルとなる。いわき市のような医師不足の大都市は、若手医師にとってはチャンスだ。官民を問わず、志ある病院経営者がいれば、飛躍のきっかけとなる舞台を提供してくれる。尾﨑医師のような成功例が出れば、彼を慕い、若い学生や医師が集まってくる。これぞ良循環だ。そのために、すぐにやるべきは、地域枠制度の運用の見直しだ。いわきで働きたいと考える若い医師に、希望する病院で働けるような制度設計にすべきである。





トップ写真:左から東北大学医学部の村山安寿君、そして常磐病院乳腺外科医の尾﨑章彦医師 出典:筆者提供




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