現、元首相「対露」で丁々発止の論戦 岸田氏、安倍外交検証の重要性認める
Japan In-depth / 2022年6月3日 18時0分
樫山幸夫(ジャーナリスト、元産経新聞論説委員長)
【まとめ】
・衆院予算委員会で、岸田首相と野田元首相が、安倍政権時代の対露外交をめぐって、真剣勝負を展開した。
・元首相の追及を受けて、岸田首相は安倍対露政策について「検証が重要」と述べた。
・本来、国会で追及を受けるべきは、プーチン大統領との個人的関係を過信、国民に領土返還の幻想を与えた安倍氏自身だ。
■「国会かくあるべし」印象付けた真剣勝負
現、元首相による国会論戦は、さすが見ごたえがあった。
野田元首相(立憲民主)が6月1日の衆院予算委員会で、安倍政権の対露政策の問題点を指摘、岸田首相に検証を迫った。首相は、自ら外相として関与した経緯もあり、真正面から受けて立った。メモも見ず、丁々発止の応酬が展開された。
双方の主張が折り合うことはなかったが、揚げ足取り、はぐらかしが横行する最近の国会で、「国会かくあるべし」と感じさせる真剣勝負の趣をみせた。
結果は押し気味に進めた元首相が際どい判定勝ちーというべきか。首相は、安倍政権の対露政策が検証に値することを実質的に認めざるを得なかった。
この論争の影の主役は、いうまでもなく安倍元首相。狂気じみた独裁者、プーチン大統領との〝個人的友情〟によって北方領土問題を解決しようともくろんだ外交的失策を総括するのは岸田首相ではなく、むしろ安倍氏だろう。
写真:国際連合総会にてシリア内戦について意見を交わす野田元首相(2016年9月)
出典:Photo by Spencer Platt/Getty Images
■野田氏、クリミア併合後の甘い制裁批判
野田氏は質問の冒頭、首相在任中の2012年6月、メキシコ・ロスカボスで行われたプーチン大統領との最初の会談で、2時間近く待たされたことに触れた。岸田首相もやはり最初に会談した際、先方が2時間も遅れてきたことを紹介、プーチンの手練手管をめぐってまずは盛り上がった。
本題に入った野田氏は、安倍政権での対露外交の大きな節目について「検証しなければならない」として、最初に2014年のロシアによるクリミア併合への対応をとりあげ、日本の制裁が極めて弱く、しかも決定が各国より10日も遅れたことへの疑問を投げかけた。
クリミア併合前ではあったものの、ロシアのソチで開かれた冬季五輪に、アメリカ、フランスなど各国首脳が人権侵害を理由に見送ったにもかかわらず、安倍首相が出席したことについても、「価値観外交といいながら、ロシアには甘い」と皮肉たっぷりに批判した。
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