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「新しい資本主義」は新しいのか?

Japan In-depth / 2022年6月5日 11時0分

「新しい資本主義」も、経済運営の重心を、収益・成長最優先とは違う軸へと少しずらそうということなのだと思うが、しかし、日本は米国型資本主義へのキャッチ・アップがなお不十分なところも多い。そこでの方針修正となると、これまでのモメンタムとの整合をどう図るかといったことも含め、ある種の戸惑いが生じても不思議ではない。





収益、成長、効率を指向する価値観と、安全・安心、安定、持続性を重視する価値観のバランスをどうとるか。かつ、日本の社会が受け入れることができるようなバランスとはどういうものか。「新しい資本主義」の模索は、そういう問い掛けでもある。





今日の米国経済は、圧倒的勝者が全体の成長を牽引している。所得格差を拡大させながら、経済全体としては日本より高い成長を実現しているのである。元々、日本はそういう経済を実現したかったのだろうか。さらには、日本の社会はそういう経済を受け入れることができるのであろうか。









▲写真 日米豪印首脳会合(クワッドリーダーズサミット)に出席する岸田文雄首相(2022年5月24日) 出典:Photo by Yuichi Yamazaki/Getty Images





■ 日本の新しい資本主義





先般、政府から「新しい資本主義」実行計画案が発表された。内容をみると、人への投資、イノベーションの促進、新興企業の育成などが核となっており、上述の分配の面よりは成長の面が前面に出ているとの論評が多い。





議論の本質がバランス論だという整理をすれば、部分を取り上げての論評はあまり意味がないが、日本経済の元気を取り戻すという観点から、今回の実行計画案に盛り込まれた施策は非常に重要である。現在、日本経済が置かれている新しい環境にフィットした持続性のあるビジネスの分野へと、ヒト・モノ・カネの経営資源を円滑にシフトさせていくことは、日本経済の活性化に不可欠だ。





しかし、政治的な配慮なのであろうか、新しさの部分、即ち、持続性といった面からの価値をより重視していくという面は、今回の実行計画案ではあまり明示的に触れられていないようだ。本当は、これまで目指してきた米国型資本主義とは違う価値を重視するという主張が織り込まれていなければ、新しい資本主義にはならない。





参議院選挙を前にアピールできる内容にはならないのかもしれないが、所得の再分配にまで具体的に踏み込まなくても、米国型資本主義を一辺倒に目指すような方向性を見直すというメッセージがあっても良いのではないか。





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