悪魔くんとプリンセスキャンディさん 地名・人名・珍名について その1
Japan In-depth / 2022年6月17日 15時26分
話は18世紀末のフランスに遡る。1789年に勃発した市民革命で、ブルボン朝による絶対王政が打倒され、1793年には国王ルイ16世、王妃マリー・アントワネットらが処刑された。厳密に言えば、1972年に王権が停止されたので、国王と王妃には「元」がつくのだろうが。
ともあれ、その革命の熱気の余波と言うべきか、革命騒ぎの誤作動とでも言うべきか、この時期、生まれた子供に「断頭台(ギヨチーヌ=ギロチン)」「貴族殺し(ノーブル・ムートゥリエ)」などと名付ける例が数多く見られたのである。
▲写真 1793年10月16日にコンコルド広場にてギロチンで処刑される王妃マリー・アントワネット。 出典:Photo by by Fine Art Images
キリスト教文化圏では一般に、
「この子はたしかにうちの教区で生まれています」
と記録を残すことで本人の身元が確認できるようになっていたのだが、物騒な名前の届け出が相次ぐことに苦慮した教会は、とうとう役所に下駄を預けてしまい、併せてあまり不穏当な名前は認めない、といった一種のガイドラインを設けることにした。
これがフランスにおける住民登録制度の起源とも言われるのだが、なにぶん社会的混乱の極にあった時代のことで、地域差もあり、正直よく分からないことが多い。
また、住民登録制度と述べたが、日本のような整備された戸籍制度は、現在に至るもフランスには存在しない。と言うより、家族全員の関係性が一目で分かるような戸籍制度は、日本、中華民国、韓国にしかないと聞く。この問題についても、項をあらためる。
ともあれ本稿を読まれた読者は、キラキラネームが日本特有の問題ではない、という点だけはご理解いただけたこと思う。
前述のように、こうした名前に一定の規制をかけるべきだという考え方には、賛同する人が多いようだが、私個人としては、法律が関知すべきところか否か疑問に思う。
タレントの壇蜜がコメントしていたが、彼女の本名は「支静加」と書いて「しずか」と読むそうだ。とりたてて不適当でも不穏当でもないように思えるのだが、当人に言わせると、
「漢字で(正確に)書ける人がほとんどいないので、電話で説明するの面倒だし、大体診察券間違ってるし」
「親から子供への最初の贈り物なのだから、よく考えた方がいいと思います」
ということになるらしい(NIFTYニュースなどによる)。
親御さんの側には、なにかしらの思い入れがあって名づけたのであろうし、前述の「王子様」のように、どうしても嫌なら所定の手続きを踏んで改名する自由もある。
そもそもどこの国でも、時代によって人に名前にも流行り廃りは見られる。
次回は、その話を。
トップ写真:東京、霞ヶ関の法務省 出典:Photo by Tomohiro Ohsumi
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