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現地語風と自国語風(上)地名・人名・珍名について その3

Japan In-depth / 2022年6月22日 11時0分

ただ、漢字の読み方はそれぞれ違う。中国大陸ではリン、朝鮮半島ではイムと読まれる。


時折、朝鮮半島の人名についてはキム・ジョンウン(金正恩)とかユン・ソギョル(尹錫悦)のように現地の発音に即して読み書きするのに、どうして中国の人名は「しゅうきんぺい」と日本語風に読むのか、といった疑問を呈する人がいる。


たしかに習近平は英語メディアではXi Jinpingと書かれるので、おそらく近似的な発音はシー・ジンピン(もしくはチンピン)なのだろう。


これはどういうことかと言うと、相互主義という考え方に基づくものだ。


たとえば私が中国のメディアに取り上げられたような場合、リンさんと紹介される。一方、韓国のメディアではハヤシさんとされてイムさんとは呼ばれない。


そうしたわけで、日本のメディアでは朝鮮半島の人たちの姓名は現地風に、中国大陸の人たちの姓名は日本風に発音しているというわけだ。NHKのハンドブックなどにも、中国の地名。人名は「原則として(中略)日本で通用する漢字で書き、日本語読みとする」と明記されている。


とは言え、上海、北京、香港などのように、現地音読みが定着している場合は問題なしとされている。中国のメディアでも、さすがに東京をトンチンとは呼ばないようなので、これも相互主義なのだろうか。


以前私は、和製英語をただして行こうという発想は良いが、なにをもって正しい英語と定義するかは難しい議論になるのではないか、と述べたことがある。


中国語にせよ、話を漢字の読み方に限っても漢音と呉音があり、先ほど「現地語読みが定着している場合は」などと述べたが、たとえば北京の人はペキンではなくベイチンと発音するというように、所詮は「現地語風」にとどまるのではないか。


中国人とちゃんとコミュニケーションをとれるようになりたいと思うのなら、中国語を一から学ぶのが実は一番の早道であると、私は思う。


さらに言えば、これは北東アジアの漢字文化圏だけに見られる問題ではない。


次回は、その話を。




トップ写真:はんこショップにならぶ三文判(2020年10月21日、東京) 出典:Photo by Carl Court/Getty Images




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