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日欧地名事情 地名・人名・珍名について その6

Japan In-depth / 2022年6月29日 14時18分

例によって余談にわたるが、ブライトンという街に昔から日本人留学生が多いのは、ロンドンまで列車で1時間弱と便利な上、年金生活者の家は比較的安価にホームステイできるという事情があったから、と言われている。ペンションというのも、もともとは年金の意味で、年金生活者が(子供が独立するなどして)空いた部屋に観光客を泊め、小銭を稼いだことから来ているので、民宿の「お洒落ヴァージョン」という意味はもともと含まれていない。





話を戻して、イングランドの地名は、ローマの影響を抜きにしては語れない。





首都ロンドンからして、ローマ人がロンデニウムと名づけたことに由来する。ただ、そのまた語源はと問われると、古代ケルト語で「渡るには広すぎる川=おそらくテムズ川のこと」であるとか、いや「荒れた土地」といった意味のウェールズ語が起源であろうとか、未だ定説は確立されていないようだ。本稿でも「諸説あり」と明記しておく。





他にはイングランド北西部、ウェールズとの境界近くにチェスターという街があるが、これはローマ軍団の「駐屯地」の意味。





サッカーで有名なマンチェスターはじめウィンチェスター、ドーチェスターなどの地名もあるが、語源はすべて同じである。これらの地名はまた、イングランド中部に多いのだが、これは、ローマ軍団の支配が及んだ北限で、その領地を「北方の蛮族」から守る目的で多くの駐屯地が置かれたからだが、これもまた、スコットランド人に言わせれば、自分たちはローマに屈することなく独自の文化を育んできたのであるから、イングランドに見下される筋合いはない、ということになるらしい。どこの国でも「歴史問題」を持ち出すと、話がややこしくなりがちだ。





それで思い出されるのは、日本で最も有名な地名のひとつであろう「霞ヶ関」だ。





唐突になにを言い出すつもりか、と思われた向きもあろうが、東京都千代田区の官庁街の他に、埼玉県川越市にも同じ地名があって、東武東上線の駅名にもなっている。









▲写真 東京千代田区霞が関の官庁街 出典:Photo by Koichi Kamoshida/Getty Images





いずれも北緯35度40分あたりに位置し、ふたつの霞ヶ関を結んだならば、ちょうど関東平野を真ん中から南北に分断したようになるといった位置関係だ。





伝承によれば、日本武尊が北方の蝦夷(えみし)に備えて「関」を置いたのが由来とされるが、要は古代、大和朝廷の勢力範囲がこのあたりまでで、その向こうは霞んでいる=状況がよく分からない、といったほどの意味の地名なのである。





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