参議院選挙の本当の「争点」⑤雇用
Japan In-depth / 2022年7月3日 18時0分
西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)
【まとめ】
・日本経済地位低下の原因は、円安政策、低生産性、遅い企業の意思決定、産業構造変革ができなかったこと。
・「日本的雇用慣行」(新卒一括採用、長期雇用、年功賃金)は変わらざるを得ない。
・解雇規制の見直しと解雇される労働者の職業訓練はセットでないといけない。
日本経済の世界における地位の低下は顕著である。1人あたりGDPなどはOECD各国でも下位に位置し、生産性も低く、企業の競争力は低下。日本経済の問題は根深いと言われている。
▲グラフ 一人当たりのGDP比較 【出典】筆者作成
経済政策がうまくいかなかった原因として、前回も触れたが、まず第一にアベノミクスの円安政策である。株高、企業の収益好調という成果は得たものの、消費者と労働者の犠牲によっていたともいえる。経済学者の野口悠紀雄さんが言うには「日本の製造業は高付加価値製品へのシフトを思うように進められず、韓国や台湾、中国など新興国と価格競争せざるを得ない状況に追い込まれた」中、コスト対策から生産設備の海外移転で国内が空洞化。円安で企業の収益はよくなったものの、「本来行われるべき技術開発と産業構造の転換をせずに、雇用を維持」しただけだった。
第二に、日本経済の生産性の低さである。アベノミクスの生産性革命や働き方改革はそれなりに正しい政策であった。第三に、企業の意思決定の遅さである。何にするにせよ、新規事業の企画や提案をしても、多重の意思決定やリスク回避思考が働き、実行まで至るにも時間がかかるし、旧態依然の人事・組織制度ゆえに進まない。結果、欧米のビッグテックは生まれるわけもなく、破壊的イノベーションやスタートアップも増えず、大手企業や業界地図はあまり変わっていない。第四に、産業構造変革ができなかったことなどである。古い産業は補助金・助成金で延命し、新しい産業への産業構造改革はなかなか進まず、雇用のシフトも行われていない。
今回は、日本経済の最も大事な「雇用」について焦点を当てたい。
□雇用確保は絶対か?
労働組合は雇用を守れ!というが、多くのロスジェネ世代は正社員にもなれていない人も多い。一方、50代のおじさんは「50G」とか「仕事しないおじさんだ」とか言われてしまい、管理職になれず、活躍する場を失い、会社にしがみつき、高い賃金をどうにか確保しようとしている。こうした「皆が不幸な雇用環境」は、日本経済が直面する「問題」であり、真剣に向き合わざるを得ない。
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