中国の偽装対日友好に注意を
Japan In-depth / 2022年7月8日 18時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・中国外務省の趙立堅報道官が日本は中国にとっての「重要な協力パートナーだ」と言明した。
・NATO首脳会議での米欧連帯での中国非難が、この唐突な対日友好姿勢を引き起こした。
・日本側としては中国政府のこの種の小手先の偽装やまやかしをしっかりとみすえていくことが肝要である。
中国外務省の趙立堅報道官が6月30日、日本は中国にとっての「重要な協力パートナーだ」と言明した。公式の記者会見での言葉だから中国政府全体の意思表示ともいえる。この言明は二重三重に驚きである。
中国政府全体ではこのところ日本に対して批判や非難の言明を発し続けていた。日本がアメリカと連携して、台湾問題や中国内の人権問題を提起することなどに反発してきたのだ。それが突然、友好的な言葉を発したのである。
さらにはこの趙立堅という人物の口から日本への優しい言葉が出ることへの驚きである。趙氏といえば、
中国が新型コロナウイルスの世界大感染を許して国際非難を浴びた時期から強硬な反発の言辞で知られてきた。その強硬さから彼は「戦狼外交官」とも呼ばれた。
結論を先に述べれば、中国のこの唐突な対日友好姿勢は偽装である。アメリカや欧州のNATO(北大西洋条約機構)諸国が中国を米欧全体への「挑戦」と位置づけ、警戒を明示したことを踏まえ、中国は日本を米欧から離反させようと対日姿勢を戦術として友好的にしたのだといえる。
だから中国の日本へのこの微笑は偽装、かりそめの友好的態度である。中国の日本に対する年来の敵対的な政策は決して変わってはいないことを日本側は銘記すべきだろう。
趙立堅報道官は同30日の記者会見で、NATO首脳会議に初参加した日本と韓国に対し、「アジアの重要な国家、中国との重要な協力パートナーとして幅広い共通の利益を持っている」と述べた。「アジアの平和と安定、発展を守るためにともに努力することを望む」とも呼びかけた。いかにも日本を中国側においての友好的な国だとみなすと響くような言明だった。
この言明は唐突であり、異様だった。なぜなら中国政府も趙報道官もつい最近まで一貫して日本を非難してきたからだ。
趙報道官は5月6日の定例記者会見では岸田文雄首相の言明を非難の標的にあげていた。「日本側の岸田首相らがいわゆる『中国の脅威』を大げさに言い立てているのは、自身の軍拡のために口実を設けようとするもので、地域諸国の相互信頼と協力を損なう。中国側は日本側の関連する言行に対し断固たる反対を表明する。日本側は直ちに大国の対立を煽ることをやめ、地域諸国間の相互信頼増進と地域の平和・安定促進に資する事を多く行うべきだ」という正面からの日本攻撃だった。
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