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中国の偽装対日友好に注意を

Japan In-depth / 2022年7月8日 18時0分

趙報道官はさらに4月26日には日本の福島第1原発の処理水の海洋放出を江戸の浮世絵師、葛飾北斎の代表作「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」をゆがめた風刺画を自分自身のツイッターに投稿した。船上で防護服を着た人物が放射性物質のマークの入ったバケツから緑色の液体を海に流す様子が描かれ、富士山は原発とみられる建造物に描き換えられていた。趙氏は「北斎が生きていれば非常に心配していただろう」と英語で書き込み、日本の措置を嘲笑していた。日本政府がその風刺画の削除を求めたが趙氏は応じなかった。


また中国共産党政権の見解をそのまま表明する共産党機関紙の環球時報は5月19日付の社説で、バイデン大統領の訪日を「中国を標的にした騒ぎを起こす旅だ」と批判し、そのなかで「日本がそれに追随し中国の包囲を図っている」と攻撃した。


要するに中国はこのところ日本への総攻撃を浴びせてきた、といえるのだ。


ところがその中国が日本を「中国の重要な協力パートナー」と呼んだのである。この変化をもたらしたのは明らかにNATO首脳会議での米欧連帯での中国非難だった。中国の最近の野心的な国際規範無視の言動がNATO全体への「体制上の挑戦」と断じられたのだ。米欧諸国が連帯し、しかもNATOという集団的な軍事同盟の名の下で中国に対して敵視とも呼べる強硬な姿勢の団結をみせたのは初めてだった。







▲写真 NATO首脳会議でのバイデン氏の記者会見の様子(6月30日) 出典:Photo by Denis Doyle/Getty Images


このNATOの中国敵視声明が出たのは6月29日、趙報道官の唐突な対日融和声明が出たのは翌日の6月30日だった。あまりにも露骨な中国政府の態度豹変の戦術だといえよう。その目的は明らかに日本をNATOから少しでも引き離そうということである。


中国政府の対日姿勢はこれまでも中国の対米関係が険悪になると、唐突な形で融和や友好の方向へ動くという傾向をみせてきた。私は20年ほど前、産経新聞中国総局長として北京に駐在していたころから、この奇妙な相関関係を目撃してきた。その考察の結果を「米中関係が険悪となり、日米同盟が強化されると、自民党の二階俊博氏が北京に姿をみせる」という表現で報道してきた。その意味は以下のようだった。


中国政府は多様な案件で日本を非難していても、いったんアメリカとの関係が一定以上に悪くなると、それまでの日本への姿勢を急に変えて、微笑や友好の態度を示す。その理由はアメリカと日本を同時に敵にしておくことを避け、日本への融和戦術で日米間の離反を図ろうとするためだ。


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