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イスラム金融の虚像と実像 異文化への偏見を廃す その3

Japan In-depth / 2022年7月21日 11時0分

▲写真 定めの夜初日を祝うイスラム教徒(アゼルバイジャン・バクー、2022年4月20日) 出典:Photo by Aziz Karimov/Getty Images


それでは金融そのものが成り立たないではないか、と思われるかも知れないが、世の中、色々なことを考えつく人がいるものだ。


銀行が個人に融資を行う、もっとも一般的な形態は住宅ローンだが、これは誰もが知る通り、購入した住宅を担保にして銀行から金を借り、金利を加えて返済してゆく。


これに対してイスラム金融と呼ばれるシステムは、まず銀行が住宅を購入し、それを「手数料」を上乗せした金額で顧客に転売するのである。早い話が信販会社の業務と変わらず、利子付きの返済ではなく分割払いうことになるので、イスラム法にも抵触しないらしい。


ただ、言うなれば無担保なので、信用調査はかなり厳格であると聞く。ムスリムなら誰でも無利子で金を借りられる、というわけではないのだ。


預金者の立場からしても、杓子定規に言えば銀行から利子を受け取れないことになるが、皆が利益より信仰を選ぶのかと言われると、どうも違うらしい。


実際にある調査期間が行ったアンケートによれば、


「通常の銀行取引とイスラム法に照らして合法的な取引と、どちらを選ぶか」


という設問に対し、「通常の銀行取引」「損をしないのならイスラム法に則った取引」「たとえ損をしてもイスラム法に則った取引」と答えた人が、ちょうど3分の1ずつだったそうだ。


念のため述べておくと、この手の調査はかなり頻繁に行われるので、細かい数字はそれぞれ違う。3分の1ずつというのはごく大雑把な集計である。


いずれにせよ、たとえ損をしても……という表現で利益より信仰を選ぶという人は、もともと多数を占めているわけではない。とりわけ石油成金などは、


「儲かるのならば、ユダヤ資本どころか悪魔が経営する銀行でもかまわない」


という輩が多い。これは断じて都市伝説の類いではなく、中東各地で外交官として活躍し、1000人以上のムスリムと交流した若林博士からの情報である。


ともあれこうした次第なので、無利子で銀行を運営して行くのは現実的ではない。そこで、


「リバーは発生しませんが、合法的な〈配当金〉は受け取れます」


という言い方でもって顧客(=預金者)を獲得しているようだ。


一方、こうした国々で欧米の銀行は活動できないのかと言うと、そういうことはない。


かつて地中海世界に覇を唱えたオスマン帝国は、今の感覚で言っても開明的な国家で、西欧諸国からの資本導入を積極的に進めた。


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