参院選から見えた沖縄政治の迷走
Japan In-depth / 2022年7月22日 23時0分
なぜ、辺野古問題は厄介なのか。ここで詳しく述べることはできないが、ポイントだけ挙げておこう。
<辺野古施設建設の非合理性と政治性>
辺野古施設とは、住宅密集地のど真ん中に存在する普天間飛行場の代替施設として建設されるものである。数十機のオスプレイとヘリのために、「深い」大浦湾を埋め立て、10数年の年月と1兆円前後を費やして建設する計画になっている。海底の軟弱地盤も発見され、難工事が予想されている。
多くの矛盾を抱えるプロジェクトだが、日本政府がこれにこだわるのは、数多くの案が出ては消え、「唯一」残った選択肢だからだ。
さらに、この施設計画は、巨額の埋め立て利権と、大物政治家がからんだ「政治案件」でもあり、変更しにくい事情もある。
一方、沖縄県民は、巨額の沖縄振興予算と引き換えに、沖縄県知事から埋め立て承認を得るという、強引な国の姿勢を見せつけられた。今や、多くの反対意見を押し切って工事が進み、諦めムードが広がるが、反発は地下茎のように根強く残る。
辺野古問題にはこのような経緯があるため、「容認」の明言は、政府の立場に「寄り添った」と見られかねない。その点を古謝候補がどこまで認識したかどうか。
<若きエリートへの期待と違和感>
古謝氏は、沖縄では有名な進学校、昭和薬大付属高校から東大に進学後、総務省に入省という絵に描いたようなエリートである。その輝かしい経歴は、期待を集めるのに役立ったが、一部の県民に距離を感じさせたようだ。「『東大卒』を前面に出さないでほしい」という陣営内からの声もあった。
古謝氏はスピーチ力があり、態度も堂々としていた。さらに、総務省から長崎県に5年間出向し、同県で4つの役職を務めた経歴を持つ。本人も地方行政の実績には自信を見せた。だが、沖縄独特の問題を「どこまで分かっているのかねえ」との疑問も聞こえてきた。
日本の行政においては、良かれ悪しかれ、「20年働いて一人前」が常識である。その基準を念頭に、まだ若いのに自信過剰と見る人もいた。
<意外な落とし穴>
最大の誤算は、諸派の3候補が合計39,000票余りも獲得したことだ。保守票の一部が諸派に流れたことが、古謝候補には致命傷になった。伏兵に足をすくわれたのだ。
加えて、茂木幹事長や菅氏から岸田首相、林外相に至る大物政治家が続々と同候補応援のために来県したことは、むしろマイナスになったとの指摘がある。彼らへの対応に時間と労力を費やし、末端の選挙運動がおろそかになったというのである。党本部が沖縄を「重点選挙区」とし、大物を投入したことが裏目に出たとすれば、皮肉と言うほかはない。
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