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参院選から見えた沖縄政治の迷走

Japan In-depth / 2022年7月22日 23時0分

その背景には、自民党と政権幹部たちの沖縄理解の欠如がある。その結果として、政府に対する不満が県民に広がり、革新系の支持層を厚くしてきたと言える。


菅氏の言動を見ると分かりやすい。彼は、この10年、沖縄への経済支援策を次々と実行したが、他方で、官房長官時代に「沖縄だけが苦労した訳ではない」とも語っている。要するに、沖縄の経済振興には熱心だが、県民の感情には無関心なのだ。このギャップに県民は敏感である。


さて、今回の選挙で「オール沖縄」は踏みとどまった。玉城デニー知事の個人的な人気も考えれば、9月の知事選に向けて明るい展望が開けたと言える。







▲写真 与那国島の自衛隊レーダー施設(2022年4月13日、沖縄県・与那国島) 出典:Photo by Carl Court/Getty Images


<玉城知事と「オール沖縄」は変身できるか>


だが、たとえ玉城知事が再選されたとしても、経済、生活、子育てに具体的な政策を打ち出せなければ県政は漂流し、その支持基盤である「オール沖縄」の衰退は止められない。


中国の脅威が増している以上、米軍基地が一挙に縮小することは考えにくい。当面、米軍基地問題はホットであり続けるだろうが、若い世代は、米軍基地に反感を抱いてはいない。基地問題の解決よりも、むしろ、産業の活性化と安定した生活を求めている。


戦争体験者の高齢化が進み、沖縄における平和主義の影響は徐々に弱まっている。ある「オール沖縄」関係者は、「今年の参院選と知事選が革新系の勝てる最後の大型選挙だ。これから沖縄の政治は変わる」と漏らした。


革新系が生き延びようとするのであれば、反基地・平和運動一本槍から脱皮しなければならない。そのためには、まずは県民の声をしっかり聴き、沖縄社会が抱える課題を把握する必要があるだろう。生活と社会を直視してこなかった彼らに、果たして、それができるかどうか。







()▲写真 玉城デニー沖縄県知事(2018年10月1日) 出典:Photo by The Asahi Shimbun/Getty Images


<革新系が避けてきた安全保障問題>


今、中国は強硬な外交と軍拡を進め、人権無視の体制を作り上げている。そのような状況の中で、「アジアの架け橋」を目ざすというような標語を繰り返しても現実味はない。東アジア情報を収集して、この地域における沖縄の可能な道を模索することが求められている。


仲井眞知事時代に、県庁内に「地域安全政策課」が設置され、内外の専門家とのネットワークを築いていた。同課配属の職員たちは、東アジアの安全保障について、熱心に情報収集していたものである。だが、「オール沖縄」系知事の誕生後、そのセクションは廃止され、現在の県庁には安全保障問題の担当者はいない。


世論調査を見ると、自衛隊の沖縄への配備に肯定的な県民が多いことが分かる。それだけ、中国への警戒感と安全保障への関心が高まってきたと言える。県民の現実感覚に応える「オール沖縄」でなければ、時代の流れから取り残されてしまう。


今後、上に述べたような課題に取り組む姿勢が、「オール沖縄」陣営に芽生えるかどうか注目していきたい。


トップ写真:普天間飛行場の滑走路に駐機するオスプレイ(2018年5月31日、沖縄・那覇) 出典:Photo by Carl Court/Getty Images


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