参院選から見えた沖縄政治の迷走
Japan In-depth / 2022年7月22日 23時0分
保守陣営は、9月の知事選に向けて、体制立て直しを図ろうとした矢先に、旧維新の下地幹郎氏の出馬表明が飛び出した。玉城知事の人気が高いことを考えれば、保守系の佐喜真候補は苦戦を免れないだろう。さて、保守陣営はどこまでまとまれるかどうか。
ここまで、保守系候補であった古謝候補の敗因を探ってきた。以下、「オール沖縄」の伊波洋一候補が苦戦に追い込まれた背景を考える。
<働かなかった伊波議員>
何よりも、伊波候補の評判が悪すぎた。県民の中に積極的に入っていかず、現役議員としての6年間、仕事をほとんどしなかった。「オール沖縄」支持者の間にさえ不満が多かった。
小選挙区から選出される衆議院議員と違って、参議院議員は県全体を代表する議員である。しかも、6年間選挙がなく、身分が保証されている。県内をくまなく回って県民の声を直接聞き、各地域が抱える課題を把握し、政策を提言すべきだったが、この間、沖縄本島北部や離島で伊波氏の姿を見た人はほとんどいない。
同氏ばかりではなく、沖縄選出の革新系参議院議員は名誉職的な地位にあぐらをかき、ほとんど働かなかった。伊波氏もその悪しき伝統を踏襲し、県民の苦境をよそに「遊んでいた」のである。県民の同候補への期待が低かったのは当然である。
<「オール沖縄」の退潮>
また、2018年の翁長前知事の逝去後、同候補を支える「オール沖縄」から、糸の切れた凧のように経済人などの脱落者が相次いだ。埋め立て工事が進み、辺野古問題に対する諦めムードが広がったこともまた、陣営には逆風になった。
コロナ感染が広がり、順調に見えた観光業が大打撃を受けたが、「オール沖縄」の中核を占める革新系は、基地問題ばかり語る傾向があり、経済やコロナ対策への関心は薄かった。政策面で、この陣営に期待した県民は少ない。
<それでも「オール沖縄」が勝った理由>
候補者の魅力がなく、陣営に勢いがないにもかかわらず、なぜ、伊波候補は当選できたのか。
まず、すでに述べたように、保守系候補が無名の新人であったこと、そして戦略ミスを犯したことが挙げられる。
さらに、ウクライナ戦争のインパクトと、盛んに語られた「台湾有事」への懸念も大きな要因である。特にウクライナ戦争の悲惨な映像は、一部の県民に沖縄戦の記憶を呼び起こした。漠然とした戦争への不安が伊波氏を押し上げたと言える。
加えて、政党支持率における保革の差が小さかったことが重要である。比例区の沖縄における政党別得票率を見ると、立憲、共産、社民がそれぞれ10%前後、令和が7%弱だったのに対し、自民27%、公明15%弱であった。沖縄の革新系の支持者はまだまだ多い。
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