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陰謀説の危険 その7 オウム真理教にみる日本の反ユダヤ主義 

Japan In-depth / 2022年8月3日 23時0分

陰謀説の危険 その7 オウム真理教にみる日本の反ユダヤ主義 


古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)


「古森義久の内外透視」











【まとめ】





・日本には集団として在住しているユダヤ人がいないにも関わらず、一部では反ユダヤ主義が語られている。





・過激な実例として、オウム真理教のユダヤ攻撃が国際的にも知られ、警告の対象ともなってきた。





・日本の文化研究で知られるグッドマン教授は、日本の反ユダヤ主義やホロコースト否定は、ささいな現象として軽視することはできないと主張。

















 さて国際情勢はなお緊迫を高める。ロシアのウクライナ侵略は激しさを増す。中国の軍事を背景とする威嚇的な言動もエスカレートを続ける。アメリカ議会のナンシー・ペロシ下院議長の台湾訪問では中国の威嚇にバイデン政権もかなりたじろぐ様子をみせた。米中関係はなお緊迫を増すわけだ。





 2022年夏の日本、猛暑とコロナ大感染で、厳しい日々の連続のようだ。「ようだ」と書くのは私自身がいま日本にいないからである。本来の報道活動の拠点、アメリカの首都ワシントンに戻ったのだ。日本の知人友人には申し訳ないが、こちらはコロナの感染はなお多いとはいえ、環境は快適である。





 さてそんななかでわが日本ではなおウクライナ戦争をめぐって、ユダヤ陰謀説が社会のごく一部とはいえ、語られている。「プーチンを煽り、ウクライナ侵略をさせたのは実はアメリカ側のユダヤ勢力なのだ」という趣旨の陰謀説である。私がいまいるワシントンはそのユダヤ勢力の陰の跳梁を許した主舞台のはずだが、その「ユダヤの暗躍」を証するような事実は一片もみあたらない。だが太平洋を隔てた日本の一部の識者にはアメリカでのユダヤ勢力の暗躍が手にとるごとく、わかってしまうというのだ。





 日本でのユダヤ陰謀説の歴史は古い。戦前では日本の政府や軍隊の中核に近いところでもユダヤ民族を危険視し、敵視する動きは存在した。これは反ユダヤ主義と呼ばれる動きだといえる。反ユダヤ主義は歴史を通じて、全世界のかなり多数の諸国に存在してきたが、それら諸国ではユダヤ人が実際に存在し、生活し、活動していた。その動きに対する一般社会の反発が反ユダヤ主義というところまで発展していったわけだ。





 ところが日本にはユダヤ人というのは集団としては在住していない。日本の社会や国民の一部とはなっていない。だから一般の日本国民はユダヤ人がどんな人たちであるかも、皮膚感覚ではまったく知らないのだ。しかしユダヤ人について、きわめて否定的に断じる動きが存在する。反ユダヤ主義と呼べる動きである。だから世界各国のなかでも日本の反ユダヤ主義やユダヤ陰謀説は特殊だとされる。その対象となる当のユダヤ民族がいないのに、その民族に対する警戒や敵視の声だけが起きるからだ。





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