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陰謀説の危険 その7 オウム真理教にみる日本の反ユダヤ主義 

Japan In-depth / 2022年8月3日 23時0分

 近年では日本での反ユダヤ主義の過激な実例としてオウム真理教のユダヤ攻撃が国際的にも知られ、警告の対象ともなってきた。いまからもう25年ほど前の古い話ではあるが、日本のなかのユダヤ陰謀説の極端な例としてアメリカ側の学者の警戒までを得たので、その内容を紹介しておこう。





 1996年、オウム真理教がすでにテロを実行した危険なカルト集団として幹部たちが捕まり、裁判が進行する時期にアメリカの日本文化研究学者が、オウムのテロの動機に含まれたとみられる反ユダヤ主義についての研究論文を発表した。





 この論文はオウム真理教メンバーが1995年3月の地下鉄サリン事件の前に、機関誌で「ユダヤが日本人を洗脳しようとしている」として「ユダヤへの宣戦布告」を唱えていた点などを取り上げていた。そして、この反ユダヤ主義宣言を「日本の過激な外国排斥志向の暴走例」と特徴づけて、その背後にある傾向を軽視しないようアメリカの識者らに訴えていた。





 この学術論文は「日本の反ユダヤ主義・その歴史と現代の意味」と題されていた。発表したのは日本の文化や社会研究で知られるイリノイ大学のデービッド・グッドマン教授だった。アメリカの日本研究の学会で発表したのだ。





 グッドマン教授はこのなかで、オウム真理教が機関誌「ヴァジラヤーナ・サッチャ」第6号(1995年1月25日付)で「恐怖のマニュアル」というタイトルの95ページの大特集を組み、そのすべてを「ユダヤ攻撃」にあてたことを指摘していた。「この反ユダヤ主義宣言が、2ヵ月後の地下鉄でのサリンガスによる無差別テロの動機となった可能性を無視すべきではない」と、同教授は強調した。





 グッドマン教授の論文によると、オウム真理教側はこの「恐怖のマニュアル」で、ユダヤ民族を敵と断じて、「地球上の55億の市民を代表して、無数の人間を殺す『世界の影の政府』に対し、正式に宣戦を布告する。日本国民よ、めざめよ!敵の陰謀はわれわれの生活をめちゃくちゃにしてきたのだ」などと訴えていた。また「ユダヤはカンボジア、ボスニア、ルワンダなどでの大量虐殺に責任を有し、世界の人口を2000年までに30億に減らそうと意図している」とも宣言していた。





 グッドマン論文は、オウム真理教が活動教本とした全6章の「恐怖のマニュアル」が各章で、すでに虚構と証明されている「シオン賢者の議定書」の「ユダヤの世界乗っ取り」説を引用し、警鐘を鳴らしていたことを反ユダヤ主義の例証として指摘していた。





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