ルーズベルト死去への貫太郎の哀悼に感動 「高岡発ニッポン再興」その25
Japan In-depth / 2022年8月9日 11時46分
出町譲(高岡市議会議員・作家)
【まとめ】
・東京大空襲後、鈴木貫太郎氏の総理就任を説得した山本玄峰と昭和天皇。
・敵国の大将ルーズベルトの死去を哀悼するという日本精神を則った鈴木貫太郎氏。
・「徹底抗戦」という陸軍を喜ばせる発言をしながら、終戦という最終目的を果たすリアリスト。
私が77歳で総理になった鈴木貫太郎を尊敬しているのは理由があります。まずは、スピード感です。就任4カ月間で終戦を実現したのです。自らは命を脅かす危険にさらされながらも、数千万人の命を救いたい。それが貫太郎の目的です。就任当初は、その目的実現のために、陸軍を暴走させない発言を繰り返しました。まさに目的達成のためのリアリストだったのです。私は高岡でも大きな目的を掲げながら、現実的に動く政治家になりたいと思います。鈴木貫太郎の人生を勉強するのは、市議会議員の私にとっても、ためになりますね。
鈴木貫太郎は、どうして終戦直前に総理に就任したのでしょうか。そもそものきっかけは、昭和20年3月10日未明の東京大空襲です。B29がマリアナ基地から飛び立ち、超低空飛行で、東京の下町に焼夷弾を落としました。東京の3分の1以上の面積が焼失し、10万人が死亡したといわれています。
日本政府内でも、これ以上戦争を続けることができないという見方が増えました。戦争をやめるには、決断力が必要です。小磯総理では困難とみられ、後継探しが始まりました。白羽の矢が立ったのは、鈴木貫太郎です。しかし、問題は本人が引き受けるかどうかでした。鈴木貫太郎は政治嫌いで知られ、権謀術数や裏取引などは大嫌いなのです。しかも、77歳という高齢です。
そこに説得役が現れるのです。この連載でもご紹介した、山本玄峰です。山本は高岡の国泰寺の末寺、全生庵を東京の拠点としていましたが、当時、日本で最も尊敬されている高僧でした。戦争をすぐに終わらせるべきだという考えを持っていたのです。
総理就任を内々に打診されて悩んでいた鈴木貫太郎は3月25日、山本玄峰に相談しました。
「私は海軍の人間です。『軍人が、政治に関与してはいけない』という明治天皇の教えを守ってきました。それなのに、総理大臣を受けるのは、明治天皇の教えに反することにもなり、どうしたら良いものか、非常に悩んでおります」。
それに対し、玄峰はこう諭したのです。
「確かに、あなたは日常の政治家ではないし、総理になる人でもない。総理になる者は、世の中の悪いことも、いいこともよく知っていて、いいことに尽くすことのできる人です。あなたは純粋すぎる。しかし、今はそういう人こそが必要だ。名誉も地位もいらん、国になりきった人が必要だ。あなたは2・26事件で、一度あの世に行っている方だ。だから生死を乗り越えていらっしゃる。お引き受けなさい。ただ戦争を止めさせるためですよ」。
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