中国への日米の対応の違い
Japan In-depth / 2022年8月10日 23時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・中国への対応では、軍事という要素があたかも存在しないかのごとく、軍事忌避を通してきた日本もついに認識せざるをえない。
・米中関係を考えるうえでの最初の入り口、あるいは最大の要素は軍事である。
・日本では中国の軍事力について、そもそも国会でもまずまったく言及しない。
7月末に東京からワシントンに戻った。ワシントンは私の本来の報道活動の拠点である。
このところコロナウイルスの世界的な大感染のために日本で過ごす時間が増していたから、久しぶりのワシントンだった。
そのワシントン復帰のタイミングはニュースを追う人間にとっては幸運だった。アメリカ連邦議会のナンシー・ペロシ下院議長が台湾を訪問し、その訪問に反発した中国が大規模な軍事演習という形で抗議を表明し、さらにアメリカ政府がその軍事行動を非難して、と、米中関係が一挙に緊迫を増したからだった。
米中関係のこうした緊迫はもちろん日本にも直接の大波をぶつけることになる。日本も中国の乱暴な軍事行動にはアメリカとともに批判の姿勢を明確にするわけだ。日本はアメリカの同盟国なのだからその立ち位置はそう変わるはずはない。
しかしそれでもなお日本とアメリカとでは中国に対する姿勢や態度が異なる。その相違はいまのような危機の状態でこそ、より明白となる。いやそもそも中国に対する日本とアメリカとの基本的な姿勢の違いだともいえよう。
今回、東京からワシントンに戻って感じたのはとくに日米両国間での中国論議の重点の違いだった。いま日米両国とも中国の威迫的な言動に反発を高めてはいるが、対中関係の核心の議論では日本では軍事という要素の追及があまりに薄い。つまり中国との関係における軍事という特殊な局面に対するアメリカと日本のアプローチは大きく異なる、ということなのだ。
日本では中国との関係を考え、中国の言動を論じる際に軍事という要素が大きな課題にはならない、のである。大きな課題にはしない、課題にすることを避ける、ともいえよう。
一方、アメリカでは中国への対処の究極の重点を軍事という局面におくようなのだ。中国が軍事力をどう使うか、そして米中両国の戦争となればどうなるか、という具体論にまですぐ発展していくのだ。
この点を私自身のワシントンでの8月冒頭前後のほんの数日間の体験から報告しよう。
「習近平氏が中央軍事委員会の主席としてその委員会の副主席の人民解放軍代表に『明日から台湾攻略作戦を始めれば、目的を達成できるか』ともし問えば、『達成できるが、その結果、わが海軍力の半分を失うかも知れない』と答えるだろう」
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