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10式戦車は生き残れない(上)

Japan In-depth / 2022年8月12日 19時0分

10式戦車は生き残れない(上)


清谷信一(防衛ジャーナリスト)





 


【まとめ】


・防衛省、自衛隊は国産兵器を開発するときに、「我が国固有に環境と運用」に適した装備が必要というがそれを意識すれば10式は必要ない。


・10式戦車開発にあたって、何輌の10式戦車がどのような目的で必要であり、それは戦力化まで何年かかり、開発含めた総予算がいくらかかるかという計画が国会に示されていない。


・「我が国独自の環境と運用」を鑑みれば、敵の歩兵やドローンから戦車を守るRWSの装備は他国よりも、より必要。


 


防衛業界筋によれば防衛省、陸上自衛隊幕僚監部(陸幕)は現在調達中の10式戦車の調達停止を検討しているようだ。10式戦車はこれで117輌調達されているが、まだ使える90式が300輌以上残っている。これを廃棄するのは問題だという意見があるからだ。


米、仏、英、独、伊、更にはスイス、スウェーデン、デンマーク、カナダなど先進国でも多くの国は90式と同じ第3世代の戦車を近代化して3.5世代戦車として使用している。わざわざ3.5世代の戦車を全く新規に開発する贅沢はしていない。


本音のところでは、今後次期装輪装甲車や共通戦術装甲車、小型装甲車など3種類の新型装甲車の採用と生産が予定されており、10式戦車も作っている三菱重工の生産力のキャパシティが確保できないからだろう。そうであれば手段である装備調達が目的化していることになる。


そもそも問題は自衛隊装備調達の通弊だが、10式戦車開発にあたって、何輌の10式戦車がどのような目的で必要であり、それは戦力化まで何年かかり、開発含めた総予算がいくらかかるかという計画が国会に示されていないことだ。


国会はどんな目的で、何輌がいつまでに戦力化されて、それに予算がいくら掛かるか知らないで、開発及び生産予算を承認し続けている。出てきた予算をただ承認しているだけであり、これは文民統制とはいえない。


 10式戦車は何故必要なのか。そもそも防衛大綱を読めば10式の必要性は大概疑わしい。防衛大綱では大規模な敵の機甲部隊、すなわち連隊、師団規模の揚陸作戦は想定しづらいとしている。中国にしてもそのような大規模揚陸作戦を行う能力はない。あるのは米国だけだ。


つまり戦車同士が大規模な機甲戦を行うことは想定しないということだ。想定される有事は島嶼防衛であり、ゲリラ・コマンドウ対処である。島嶼防衛では戦車は有用ではない、ゲリラ・コマンドウ対処では普通科などの火力支援であり、最新型の戦車はこれまた必要ない。それらの目的であれば90式、もっと古い74式戦車の近代化でことは足りる。


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