グローバルなブーム続くSMR投資(上)
Japan In-depth / 2022年8月17日 19時0分
中村悦二(フリージャーナリスト)
【まとめ】
・ビル・ゲイツは増大するCO₂排出ゼロの実現には「エネルギー・ミラクルが必要だ」と強調した。
・テラパワーの進行波炉(Traveling Wave Reactor=TRW)が有力とし、使用済み燃料を徐々に燃焼し、安全に長期に遠隔地でも運転できる利点を力説。
・小型モジュール炉(SMR)は品質の維持・向上、工期短縮、建設コスト削減が図れ、水素製造や地域の熱供給源としての利用も可能で、再エネの変動を補う脱炭素電源としても期待される。
マイクロソフトの創設者であるビル・ゲイツ氏は2010年2月、米カリフォルニア州ロングビーチで行われたTED(Technology、Entertainment、Design)会議に登壇し、「今日はエネルギーと気候変動について話そう」と切り出し、増大するCO₂排出ゼロの実現には「エネルギー・ミラクルが必要だ」と強調した。
TEDは1984年設立の非営利団体。高名な科学者、技術者、芸術家などを招いた同会議を毎年開催することで知られる。講演時間は18分間に限られ、そのあと司会役からの様々な質問に答える仕組み。同氏は前年、マラリア予防のワクチン普及へ蚊を放って聴衆を驚かせた。2010年の講演では蛍が光を発するのを見せながら、地球温暖化対策への関心を喚起した。
同氏は、エネルギー・ミラクルを起こすには自身が会長を務めるテラパワーの進行波炉(Traveling Wave Reactor=TRW)が有力とし、使用済み燃料を蠟燭のように徐々に燃焼し、安全に長期に遠隔地でも運転できるといった利点を力説した(今もこちらで視聴可能)。
ゲイツ氏のテラパワーとの関わりは、前マイクロソフト最高技術責任者であったナタン・ミルホルド氏を通じてのもの。ミルホルド氏は技術の目利きで多分野に知的所有権を持ち、原子力技術もその一環だった。
使用済み燃料を蠟燭のように徐々に燃焼することに関しては、東京工業大学の関本博教授(当時、現名誉教授)のCANDLE炉の研究が知られていた。同教授は米原子力学会でCANDLE炉が注目を浴び、米国の小型炉ブームを実感した、と当時語っていた。2010年3月には、ゲイツ氏が前年の11月に東芝を訪問し、東芝が開発中の小型高速炉4S(Super-Safe,Small&Simple)に関し、磯子エンジニアリングセンターを訪れたことが明るみになった(日本経済新聞3月23日付)。
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