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「参拝」も「国葬」も説明不足のままだ 戦争と歴史問題について 最終回

Japan In-depth / 2022年8月29日 23時0分

さらに言うなら、英霊に感謝、という言葉も欺瞞ではないか。靖国神社は「慰霊」の施設ではなく、英霊を「顕彰」する施設である。前述した無謀な戦争指導の最高責任者であったA級戦犯が合祀されているのに、たとえば沖縄戦で散った「ひめゆり学徒隊」の女子学生などは、英霊に数えられていない、という事実と併せて考えていただきたい。


私が、アジア太平洋戦争を「大東亜戦争」と呼んで、物量の差で負けたが戦争目的は間違っていなかった、などと主張する人たちを批判し続けるのは、戦死についてまともに勉強していないくせに、日本国民としてどうのこうのと上から目線で講釈を垂れる手合いが多いからである。


以上を要するに、高市大臣が「首相になったら公式参拝する」と公言しているのは、政教分離も反戦平和思想も真っ向から否定し、軍国主義に回帰するのだと言い切ったに等しい。先に憲法改正をすると言うのなら話はまた別だが、またしても「解釈改憲」で宗教的行為に税金を費やそうとするのが関の山ではあるまいか。私の好きな江戸落語の口調を借りれば、


「そういう了見だから早苗さん、あんたんとこにゃあ総理の椅子は回ってこない」


ということになる。どうかこれが、笑い事で済みますように。


もうひとつ、安倍元首相の国葬の問題だが、こちらも26日に


「警備費を除く費用2億4940万円を全額国費で負担する」


と閣議決定した。



写真)安倍晋三元首相の葬儀で献花に訪れる人々(2022年6月12日 東京・増上寺)


出典)Photo by Yuichi Yamazaki/Getty Images


同日の世論調査では、国葬それ自体に「反対」が「賛成」を20ポイントも上回っていたが、これについても二階俊博・自民党元幹事長は、24日に都内で講演し、


「それ(反対意見)があったからと言って、やらなかったらバカ」


などと発言した。反対意見を表明した過半数の国民はバカという理屈になるが、こんな人物を幹部にする自民党を選挙で勝たせ続けたから、こういうことを言われるのだ。


そもそも論から言うと、1926(大正15・12月25日より昭和元)年に公布された「国葬令」が、日本国憲法の発布にともなって廃止されているので、政府が閣議決定だけで国葬を執り行えるという法的根拠がない。


内閣府設置法で可能だ、と考える人もいて、実際に吉田茂・元首相の国葬は、閣議決定により執り行われた(1967年10月31日)。


ただしこれについても、異論を唱える人が多いという事実は指摘しておきたい。国税庁設置法があるからと言って、税務当局が勝手に税率を決められるわけではないのだ。


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