1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

2%インフレ目標実現後の日本経済のイメージ

Japan In-depth / 2022年8月30日 13時21分

2%インフレ目標実現後の日本経済のイメージ




神津多可思(公益社団法人 日本証券アナリスト協会専務理事)





「神津多可思の金融経済を読む」





【まとめ】





・具体的なイメージが必ずしも共有されていないだけに、良い「2%」インフレに至る日本経済のこれから道筋が説得的に描けることが大事。





・重要な前提は現在の「悪い」インフレが一時的で、期間が我慢できる範囲かどうかが問題になる。





・臨機応変な金融政策をいつも考えているというメッセージが、マーケット、国民の安心に繋がるという面もあるのでは。





 




2%インフレはグローバル・スタンダードとずっと言われてきた。しかし、日本の社会には、2%インフレ下で安定した経済状況が長く続いた経験がある訳ではない。今、現実に2%台のインフレを経験してみると、それがコスト・プッシュによるものであることもあって、決して多くの人は居心地良いものとは感じていないのではないか。これからさらにインフレ率が高まる可能性も否定はできない。2%の「良い」インフレが実現するまで、2%以上の「悪い」インフレを我慢することになるのだろうか。これからのインフレがどうなるかについては、丁寧な検証が必要だ。


■ 2%台のインフレ


2%台のインフレがかくもするすると現実のものとなり、まだしばらく続きそうだというのは、自分にとってもかなりの驚きだ。昨年の今頃、こうした状況を見通していた人はどれほどいただろうか。7月の全国の消費者物価前年比は、総合で+2.6%の上昇。8月の東京都区部の消費者物価に至っては、総合で+2.9%の上昇だ。2%インフレではなく、もはやほぼ3%インフレだ。


生鮮食品とエネルギーを除くと、その前年比は1%以上低くなる。しかし、毎日を暮らす中にあっては、そうした不可避の支出を除いたインフレ率を議論すること自体ピンとこないところがある。多くの人が、今のコスト・プッシュのインフレを何とかしてほしいと次第に思い始めているのではないだろうか。


他方、日本銀行にしてみれば、2%のインフレ目標が今のようなかたちで実現しても、それは決して本意ではない。日本経済をより元気にするためのデフレからの脱却であり、そのための2%のインフレ目標だったのだから、困る人が多いのでは駄目だ。


日本銀行も言うように、他の主要中央銀行のインフレ目標の目線は2%であり、それはグローバル・スタンダードではある。他方で、日本の社会には、2%程度のインフレの下で、経済が長く安定的に推移したという経験はない。少なくとも、現在、国内の経済活動を担う生産年齢人口(15~64歳)に属する人々にとっては、「良い」2%インフレというのがどのような経済状況か、その具体的イメージを描くことは難しいのではないか。


この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください