考えものの弾薬備蓄強化論
Japan In-depth / 2022年9月1日 19時0分
文谷数重(軍事専門誌ライター)
【まとめ】
・ ミサイルはすぐ旧式化するのであまり買わない方がよい。
・ 自衛隊は保管に困るほどの弾薬を抱えている。
・ 備蓄強化は島嶼戦や日米同盟を反映していない。
「弾薬備蓄強化論」は考えものではないか。
自衛隊弾薬の備蓄強化が主張されている。対中戦では不足する。産経記事では20倍は必要である。日経記事では3ヶ月は持たない。そのような意見が開陳されている。(✱1,✱2)
しかし、その想定は極端である。史上最大の砲撃戦であったソンムの戦い(編集部注:第一次世界大戦中の11916年、連合軍がドイツ軍に対して西部戦線の仏ソンム河畔で展開した大規模な反撃戦)を3ヶ月も続けるような話となっている。
結論の備蓄強化も妥当ではない。第1に誘導弾薬は大量在庫と相性が悪い、第2に銃砲弾は充分な在庫がある、第3に想定は南西諸島の戦いと全く合致しないことである。
■ すぐに旧式化してしまう
第1に誘導弾薬は大量備蓄と相性が悪い。高額なミサイルや誘導砲弾は最新技術で作られている。そのため短期間で旧式化してしまう。そのため大量備蓄には向かない。
備蓄増強論では特にミサイルや誘導砲弾の増強が重視されている。ウクライナに渡されたジャベリンやGMLRS、供与が噂された誘導砲弾エクスカリバーのような精密誘導兵器が大量に必要である」、そう主張している。
だが、これらの高額装備は比較的早期に旧式化してしまう。日進月歩の最新技術で作られているため日進月歩で旧式化する。パソコンや携帯電話ほど足は早くはない。ただそれでも10年余で旧式化してしまう。
実際にウクライナ問題で注目された弾薬も旧式化が見えている。ジャベリンは旧世代化しつつある。エクスカリバーもやや流行から外れ始めている。誘導砲弾は信管型の誘導キットが主流になりつつある。
これは海空自衛隊のミサイルも同じである。
海自の対空ミサイルESSMや17式対艦ミサイルは新型が見えている。ESSMブロック2や米軍採用のNSMミサイルを模倣した新型国産ミサイルである。どちらも新機軸が追加された強力なミサイルとなっている。
空自のAAM-4やAAM-5は搭載戦闘機がなくなる。どちらも今後主力となるF-35には搭載できない。国産開発中のF-3は対応予定だが、F-3はいずれは開発中止となる。
これらの弾薬を大量備蓄するとどうなるか。
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