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微妙な中比関係

Japan In-depth / 2022年9月22日 11時0分

微妙な中比関係




澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)





【まとめ】





・マルコス・ジュニア大統領は、親中派と見られていたが、米比「訪問軍協定」継続を表明。現在はASEANの中で最も「反中」的な国に。





・フィリピンは米中の“二者択一”を避けるため、日本との関係を強化。4月には日比初の外務・防衛閣僚「2+2」会談を開催した。





・マルコス大統領は就任70日余で対中抗議52件。比新政権は、中国が「紙屑」と一蹴した仲裁裁判所を重視する姿勢を強調している。





 




現在、東南アジアで、熾烈な米中の影響力争いが行われている。ここでは、ASEAN10ヶ国中、フィリピンを“ケース・スタディ”として取り上げたい。


今年(2022年)5月9日、フィリピンで大統領選挙が行われ、フェルディナンド・マルコスの息子、ボンボン・マルコス(愛称)が圧勝した。選挙当時、マルコスは大統領選候補の中で“中国に最も友好的”だという評価を受けていた(a)。そのため、ドゥテルテ大統領退任後、フィリピンが中国に近づくのではないかという分析が割と多かった。


数少ないインタビューで、マルコス・ジュニアは南シナ海問題に対する立場を明確にしている。


2016年の南シナ海に関する仲裁判断(後述)は棚上げにし、北京と二国間対話を通じて中国との摩擦が増幅されないようにする。しかし、マルコスは米国との同盟関係について、米比間の重要な「訪問軍協定(VFA)」を継続する事も明らかにした。


大統領選挙前、フィリピンのデ・ラサール大学で国際学を教えるレナト・デ・カストロ教授は、マルコス・ジュニアの「親中」姿勢をどう思うかと問われ、次のように答えている。


たとえ誰が大統領になろうと、政府機関や軍の姿勢を考慮しなければならないだろう。軍部は歴史的に中国を疑っている。外交官も中国を「友好国」とは思っていない。彼らは、中国が何をするか、いつも心配している。


南シナ海での中国の行動、例えば、①フィリピンに対する北京の自己主張の強い態度、②フィリピンに対して武力に訴えようとする北京の動きなどが、フィリピン人の中国に対するイメージに影響を与えているとカストロは述べた。


シンガポールの「ISEAS-Yusof Ishak Institute」が発表した「2022 Southeast Asia Posture Report」(b)によると、フィリピン人はASEANの中で最も中国に不信感を抱いていることがわかった。


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