日米防衛関係は泥沼か アメリカ側に告げる(上)
Japan In-depth / 2022年10月1日 23時3分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・ワシントンの米国笹川平和財団で、日米防衛関係について基調報告を行った。
・アメリカにとって日米同盟は他の諸国との同盟にくらべて唯一、相互性を顕著に欠く軍事同盟だ。
・日本の平和安全法制も、領土領海の外で集団的自衛権を行使させることは事実上、不可能。
ワシントンの米国笹川平和財団がこの9月19日、アメリカ側の日米防衛関係を専門とする若手の研究者や官僚の討論の集いを催しました。この場で私(古森義久)が基調報告という形で日米防衛関係についてのスピーチをしました。その内容の日本語訳を紹介します。
★★★
今夕はお招きくださり、ありがとうございます。
さて私の日本人の記者としての国際報道のキャリアはまずベトナムで始まりました。その後はアメリカ、イギリス、西欧諸国、さらにはアフリカのアンゴラ、東欧諸国、そして中国、さらにまたアメリカという経路となりました。こうした諸国からの日本への報道活動で私が常に考えていたことの一つは、日本が自国の安全保障にどう取り組んでいるか、でした。各国でのそれぞれの安全保障を考察した結果でした。
★ 日米防衛の研究は泥沼の世界?
その日本の安全保障について日米安全保障関係という枠内で以下、報告をさせていただきます。アジア太平洋の情勢その他は私の報告後の質疑応答、あるいは自由討論の時間に語らせていただきます。
さて、もしあなたが米日安全保障関係を学問的に、あるいは職業的に、追求することを決めたのならば、私はあえて申し上げたい。泥沼にようこそ、と。よくいわれるワシントンの政治の泥沼ではなく、日米関係全体のなかの泥沼のような世界へ、ようこそ、という意味です。ではなぜ、泥沼というような乱雑な表現をあえて使うのか。
なぜならば、安全保障や防衛というのは日米両国関係全体のなかでも、最も目立ち、かつ最も重要な要素だといえますが、このまっすぐ、堂々としてみえる関係は実は水面下では矛盾や、ときには虚構につきまとわれているからです。
★ 制限だらけの日本の防衛
まず第一にアメリカと日本とそれぞれの国家防衛に対する基本姿勢は構造的にも、概念的にもまったく異なっています。日米両国は一般に複数の国家間の軍事同盟の形成には必要な前提条件とされる共通性を有していません。
わかりやすい実例としては、日本は軍隊を保有せず、自衛隊があるだけです。日本はアメリカを含め世界の他の諸国すべてが固有の、そして自明の権利としている集団的自衛権を行使することができません。
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