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沖縄知事選結果分析③ 政策ビジョンの貧しさと人材難

Japan In-depth / 2022年10月7日 18時0分

沖縄知事選結果分析③ 政策ビジョンの貧しさと人材難




目黒博(ジャーナリスト)





「目黒博のいちゃり場」





【まとめ】





・沖縄政界の人材の乏しさが浮き彫りに。人材難とアイディア不足は沖縄社会全体の問題。





・非正規雇用の比率は40%を超え、全国一位。産業構造の歪みが。





・県庁と県内の大学が、アジアの情報を収集分析する体制を築き、専門的な人材を育成し、内外の専門家とのネットワーク築くことが必要。





 




今回の沖縄県知事選では、どの候補者もまともな政策ビジョンを提示しなかった。沖縄政界の人材の乏しさが浮き彫りになったが、人材難とアイディア不足は沖縄社会全体の問題でもある。


財政、格差、教育、医療、離島など、難題が山積する。だが、沖縄県庁内に、このような問題を綿密に調査して政策を提言する専門職員も、全体を俯瞰して将来ビジョンを描く幹部も不在だ。


政策内容より、辺野古問題で国との対決を優先する「オール沖縄」系知事が、計3期目を迎えた。行政が政治化したことで、適材適所の人事が行われず、県庁職員の士気は低い。1兆円規模の予算を持ち、2万人の職員を抱える県行政がいつまで漂流するのか、と懸念する関係者は多い。


<非正規雇用を大量に生み出す産業構造>


コロナ禍による倒産と失業によって、県民の苦境が続いてきた。とりわけ深刻なのは、非正規雇用の人々だ。


沖縄の主な産業が土建と観光であるうえに、地元企業の下請け化などの要因が重なって、非正規雇用の比率は40%を超え、全国一位である。子どもを抱えたカップルが二人とも非正規であれば、彼らは夢を持てない。家庭内暴力が頻発し、離婚も増える。困窮したシングルマザーの多くは、夜の歓楽街で働く。そこにコロナが襲い、社会末端に生きる人たちを痛めつけた。


玉城知事は、「誰一人取り残さない」と繰り返すが、問題の背景にある産業構造の歪みには言及しない。


観光業界では、滞在型とエコツーリズム、ワーケーション(仕事と観光の組み合わせ)など、数より質を目ざす試みもある。ただし、季節変動が大きく、台風やコロナなどの影響も受けやすい業界の体質の転換は、容易ではない。


2015年、那覇空港を、航空機の整備と修理の拠点(MRO)にする事業が、全日空、ジャムコ、三菱重工などによって始まった。期待は大きいが、その規模はまだ小さい。


大規模港湾のない島嶼県の沖縄では、大量生産型の製造業は育たなかった。地理的優位性と航空物流を念頭に、超小型部品の生産などと連動させた中継拠点構想も提案されている。しかしながら、情報の収集分析や高度な技術分野の人材難は続く。


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