「人が核兵器に触れると破滅もたらす」 キューバ危機の教訓語ったマクナマラ国防長官
Japan In-depth / 2022年10月14日 23時0分
樫山幸夫(ジャーナリスト、元産経新聞論説委員長)
【まとめ】
・ウクライナ危機をめぐってバイデン大統領が再来を予言したキューバ危機から60年。
・当時、米国防長官だった故マクナマラ氏は生前、ミスがつきものの人間が核兵器を扱うと破局に至ると警告していた。
・マクナマラ発言は現在の国際紛争を考えるうえでも示唆に富んでいる。
マクナマラ元米国防長官との一問一答は次の通り。
(聞き手は筆者、2002年10月30日づけ産経新聞から引用
■ ソ連の報復を危険視、攻撃論は後退
樫山:米国がキューバへのミサイル配備を知ったのは1962年10月16日といわれているが。
マクナマラ氏:「U2型偵察機による写真で米国がその事実を知ったのは、実際には14日、日曜日だった。私は15日夕に報告を受けた。大統領には16日午前8時に報告された」
樫山:ケネディ大統領は当初から明確な方針を示したのか。
マクナマラ氏: 「大統領は直ちに国防長官、国家安全保障問題担当補佐官、中央情報局(CIA)長官らによる会議を招集した。後に『エグゼクティブ・コミッティー』と呼ばれることになる幹部会議だ。大統領は『ミサイルを撤去させなければならないが、戦争の危機を冒さずにそれを実行する必要がある』と指示した。『全員一致の解決策に至ったときか、全員一致が不可能とわかったときに報告してくれ』とも言った」
樫山:一連の会議では議論が分かれたというが。
マクナマラ氏:「16日朝の会議では多くの人が(先制)攻撃を主張した。その後、数日の議論を通じて、攻撃論と海上臨検による『隔離』にとどめるべきという意見とに二分された。『封鎖』ではなく、隔離という言葉を使ったのは、ソ連に戦争の第一段階と考えてほしくないという配慮からだった」
樫山:アチソン元国務長官やバンディ補佐官(国家安全保障問題担当)らが強硬論の急先鋒(せんぽう)だったと聞いているが。
マクナマラ氏:「個人の発言に触れるつもりはないが、アチソンは攻撃論者だった。バンディは会議を建設的に進めようとした」
樫山:論議の途中で、攻撃論はなぜ勢いを失ったのか。
マクナマラ氏:「キューバを攻撃すれば多くのキューバ兵、駐留しているソ連兵に犠牲がでる。ソ連は報復として西ベルリンのNATO(北大西洋条約機構)軍を攻撃するか、米軍のジュピター・ミサイルが配備されていたトルコを攻撃してくるだろう。数日間の論議を通じて慎重論者はソ連の報復は危険なものだと主張し、攻撃論者もそれを認めざるを得なくなったからだ」
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