「林信吾vsアントニオ猪木」娯楽と不謹慎の線引きとは その3
Japan In-depth / 2022年10月24日 23時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・円楽師匠逝去に続き、アントニオ猪木氏が亡くなった。
・アントニオ猪木氏こそは不世出のエンターテイナーであった。
・氏を送るのに、粛然と喪に服すという態度がふさわしいとは、どうしても思えない。
一体どうなっているのだ、と言いたくなる。
9月30日に六代目三遊亭円楽師匠の訃報、翌10月1日には、プロレスラーとして一世を風靡したアントニオ猪木氏が他界したとのニュースが届き、この原稿を書いている20日には、ドリフターズの仲本工事氏が交通事故で亡くなった。
ドリフターズについては項を改めるが、今回はアントニオ猪木氏にまつわる思い出を、少し語らせていただきたい。(以下、引用部分などは敬称略)。
思い出と言っても面識はないのだが、実は著作の中で、猪木に勝つ自信がある、というに近いことを書いたことがある。正気で言っているのか、という声が聞こえてくるが、いたって正気だ。本人が言うのだから間違いない笑。
いずれにせよ、今なら炎上したかも知れないが、順を追って述べると、その著作とは『我が輩は黒帯〈ブラックベルト〉である』(小学館)という本で、英国で少林寺拳法の指導と普及活動に携わった経験に基づいたもの。はじめ『会報少林寺拳法』に連載したエッセイを加筆改定し、2000年に出版していただいた。
なるほど、少林寺拳法の達人だから猪木にでも勝てる、とでも思い込んだか、などといわれそうだが、そうではない。私は文武両道に秀でており、かつ眉目秀麗な拳士だが達人ではない。本人が言うのだから間違いない。
……これ以上やると、しまいにはボツにされかねないので本題に入るが、順を追って述べると、空手(あるいは柔道・合気道)と少林寺拳法と、どちらが強いのか、などという質問を受けることがたまにあるが、そもそもナンセンスだ、と断じたのである。
その流れで、あのモハメド・アリと戦った「異種格闘技戦」(1976年)を引き合いに出し、当時私は、まだ高校生で武道の段位など持っていなかったのだが、
(そんなもん、立って殴り合えばボクサーの勝ちで、寝技に持ち込めばレスラーの勝ちに決まってるだろう)
と考えたと述べた。そして、こんなことを活字にして、もし猪木が激怒して挑戦してきたらどうするか。その時は「受けて立つ」と断言した。勝つ自信があるというのは、私と猪木が柔道で言う軽量級(61キロ以下)で戦う、というルールにしてしまえばよい。
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