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「さっぱり分からない」為替レート 変動する為替レートの重荷を背負ってきた日本経済

Japan In-depth / 2022年10月26日 12時8分

日本では、少しの円高も許容できないといった雰囲気が強かったように感じるが、これはインフレ分も現地価格を引き上げることができないことの裏返しだったのではないだろうか。どうしてそういう状況に至ったのか。それは、日本以外の国々、即ち新興国も日本の主要輸出国に向けて輸出するようになったからだ。同じ製品であれば、低い賃金と新しい技術で生産するものに、日本企業が価格競争で勝てなくなっても不思議はない。


このように、実体経済活動の面で円高が受け入れられないとなると、金融取引の面、即ち金利平価の観点から日本の金利を低くせざるを得ない。日本ではバブルの崩壊後、金利が上昇する局面がぐっと短くなった。例えば、米国で金利上昇が始まっても、なかなか日本側では金利を引き上げる状況が整わない。そうこうしている内に米国で金利低下が始まって、しかし引き続き円高は避けたいので、米国に合わせ金利を引き下げざるを得ない。そういうことを繰り返しつつ、ゼロ金利、さらにはマイナス金利の世界にまで来てしまった。


新興国経済の発展の下で、いつまでも彼らと同じ製品について競争していたのでは、一銭の円高でも困ることになりかねない。日本では、それへの対応として、先進国の中で群を抜いた異次元の金融緩和を実施してきた。並行して企業側も経営資源の投入をより勝てる分野へとシフトさせては来たが、潜在成長力が他の先進国と比べなかなか高まっていないところをみると、その挑戦はなお道半ばだ。


欧米経済も、新興国経済の挑戦の中で、様々な摩擦に耐えながら経済の構造を変えてきた。日本は、その経済構造の変化の摩擦を最小化することに大きなエネルギーを投入してきた。その結果、欧米よりも低い失業率、企業の廃業率などが実現できている。それ自体は、意図した成果の達成だ。しかし同時に、その対価も払っている。


実質為替レートという概念がある。これは、ある時点を基準に上述の購買力平価が維持されたと仮定した場合の為替レートを計算するものだ。つまり、インフレ率の彼我の格差分は円高になっても良いとしたら、今の為替レートはどうだったかという試算である。そのレートは、1990年代の後半以降、ずっと円安傾向にある。金融緩和の力で、購買力平価からくる円高の圧力を跳ね除け、実際の為替レートを円安にしてきたということだ。


その結果、足元の実質為替レートは、変動相場制開始時(1973年)とほぼ同水準になっている。あの頃、海外の製品はみな高く、海外旅行もまだ高嶺の花だった。経済構造の変化という大変な作業に伴う摩擦を一生懸命小さくしてきた結果、半世紀経って振り出しに戻ってしまったことになる。さてここから、どういう決意で前に進むか。さーっぱり分からない?


トップ写真:日本中央銀行(2019年11月12日) 出典:Photo by Tomohiro Ohsumi/Getty Images


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