陰謀説の危険 その9 雑誌「マルコポーロ」の記事がなぜ反ユダヤとされたのか
Japan In-depth / 2022年10月27日 11時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・過去に、文藝春秋の雑誌「マルコポーロ」に掲載された記事が反ユダヤ主義として国際的な批判を受けた例があった。
・反ユダヤ主義糾弾団体からの抗議を受け、自主的な廃刊と編集長や社長の解任という措置を取った。
・反ユダヤ主義糾弾機関の代表はこのような記事が出たことについて、日本における「国際的な知識の欠如や犠牲者への思いやりの欠如」が原因ではないかと述べた。
これまで日本での陰謀説について論評してきた。日本での陰謀説ではユダヤ陰謀説が有力であることも報じてきた。こうしたユダヤ陰謀説に対しては当事者であるユダヤ人側からの反発や否定も激しいことも、同様に伝えてきた。ユダヤ陰謀説にはユダヤ側からは反ユダヤ主義だとする反撃が加えられるのだ。
日本でのそんな反撃で歴史に残るのはなんといっても老舗の出版社、文藝春秋の雑誌「マルコポーロ」をめぐる騒ぎだった。「マルコポーロ」1995年2月号は「戦後世界史最大のタブー。ナチ『ガス室』はなかった。」という記事を大々的に掲載した。筆者は国立病院に勤務する医師だった。いわば素人歴史家というところだろう。
筆者はアウシュヴィッツとマイダネクという2ヵ所のユダヤ人強制収容所の跡を訪れ、その他の独自の調査を基礎にしたとして、「ナチスによるユダヤ人大量虐殺はなかった」という趣旨の大胆な論文を書いたのだった。
この記事に対してアメリカに本拠をおくユダヤ人団体の「サイモン・ウィーゼンタール・センター」(SWC)と在日イスラエル大使館とが雑誌の発行元の文藝春秋に正式に抗議した。記事の内容が事実ではなく、ユダヤ人大量虐殺のホロコーストの否定はユダヤ民族への最大の侮辱、あるいは誹謗だという抗議だった。
「マルコポーロ」編集部は当初、この抗議に対してに反論のページを提供するなどして記事の撤回と謝罪を拒んでいたが、記事への非難は日本国内だけでなく、国際的にも広がりをみせ始めた。そして文藝春秋は一気に「マルコポーロ」の自主的な廃刊と同誌の編集長や文藝春秋自体の社長の解任という措置を発表した。抗議への全面的な屈服という感じだった。
この動きに対して、日本側の一部では「ユダヤ側による日本の言論抑圧だ」とする声も起きたが、広がりはなかった。文藝春秋側はSWCが同社の出版物への広告掲載の中止を内外の大企業に要請して、企業側の多くがそれに応じたことによる打撃が大きかったことを認めていた。
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