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陰謀説の危険 その9 雑誌「マルコポーロ」の記事がなぜ反ユダヤとされたのか

Japan In-depth / 2022年10月27日 11時0分

サイモン・ウィ-ゼンタールというのはナチスに迫害され、強制収容所にも入れられた実在の人物の名前である。彼は本来、学者として活躍し、戦後はユダヤ人迫害に直接、かかわったナチスの戦犯の追及に献身した。アメリカのユダヤ人社会は彼の名をとった反ユダヤ主義糾弾の機関をロスアンジェルスに設立したのだった。マルコポーロ事件の当時、その代表(副所長)はエーブラハム・クーパーというユダヤ教の教師だった。


私はこの時期、産経新聞のワシントン駐在特派員だった。マルコポーロ事件についてもアメリカ側の反響やサイモン・ウィーゼンタール・センターの動きを報道した。そしてマルコポーロの廃刊後にクーパー氏にインタビューした。その内容を再現しよう。


反ユダヤ活動と断じられたマルコポーロ事件とはなんだったのか、日本側の陰謀説症候群とはなにか、というあたりに改めて光を当てるためである。


当時の私は「サイモン・ウィーゼンタール・センター」のエーブラハム・クーパー副所長にその見解を一問一答の形で尋ねたのだった。その骨子は以下のようだった。


 


 −−マルコポーロ誌廃刊に対し、日本の一部で過剰反応だという反発もあるが。


 「廃刊による記事の撤回と謝罪という措置は日本の外では英断として大歓迎されている。各国のメディア、とくに『ロンドン・ジューイッシュ・クロニクル』紙などのユダヤ系メディアが大きく好意的に報じた。北米に四十万の会員を持つ私たちのセンターにも各地からの前向きな反応が直接、寄せられている。今回のワシントン訪問で多数の議員と会談したが、この廃刊措置への賛意が述べられた。もしこの種の措置が敏速にとられなかったら、アウシュビッツ解放五十周年のタイミングの一致で、マルコポーロ、あるいは文芸春秋社への国際的な反発は大変なものとなっただろう」 


 


 −−二月二日の東京での文芸春秋との共同記者会見をどう評価するか。


 「出席者数が予想をはるかに超え、私たちユダヤ人の過去の犠牲と苦痛とを日本の人に直接、訴える初の好機となった。米国なら編集長どまりで済ますところを文芸春秋側では社長が矢面に立ったが、これは日本的な責任の取り方なのか、あるいは事態の深刻さの認識の結果なのか、いずれにせよ、私たちは好感を受けた。報道陣の対応の熱意も同様に好感を抱いたが、同時に日本では狂信的な『ホロコースト否定』とか『ユダヤの陰謀』説がチェックされないまま、かなり広範に広がっているという印象を受けた。これらは『調査』や『研究』の偽装の下のユダヤ民族への悪質な攻撃だ」


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