実力の世界とジェンダーについて(上)娯楽と不謹慎の線引きとは その6
Japan In-depth / 2022年10月31日 12時6分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・将棋の「棋士編入試験」にのぞんでいた里見香奈・女流5冠の挑戦が失敗に終わった。
・将棋界もまた、構造的な男女の壁は取り払われつつある。
・あとは、女性棋士たちが実力で地位を築いてゆくのが正しいあり方ではないだろうか。
9月末から10月にかけては、気分が高揚するというか、楽しくなるようなニュースがほとんどなかった。読者にはあらためて説明するまでもないであろうが、著名人の訃報が相次ぎ、景気は悪く、コロナ禍はだいぶ落ち着いてきたかと思った矢先、第8波の脅威が言われ始める始末だ。
まあ長い人生、こんな時期もあるだろうと思うしかないが、13日には、将棋の「棋士編入試験」にのぞんでいた里見香奈・女流5冠の挑戦が失敗に終わった。プロ棋士としてはもっとも下位である四段3人と対局し、1勝でもすれば望みがあったのだが、結果は全敗。
彼女は12歳でプロとなり、女流のタイトル戦を次々に制して、史上最強の女流棋士との呼び声も高く、この挑戦も五分五分くらいと見る向きも多かったのだが、前述の通り厳しい結果であった。またの機会を期待したいところだが、本人は「これが実力」と認め、再度の挑戦はする意思がない、と語っている。訃報とは違うが、つくづく残念だ。
私などには、技術的な解説は荷が重すぎるが、棋士たちにせよ、ここがよくなかった、と明確に指摘することはできなかったようだ。つまりは地力の差なのだろうが、未だに男女の実力差はそこまでなのか、と強く印象づけられたのである。
ネットニュースのコメント欄では、
「長考とか体力勝負の部分もあるから」
といった声もあったが、これは説得力がない。将棋よりも対局時間が長い囲碁では、プロに男女の別はないし(女流だけが参加できるタイトル戦はある)、逆に将棋の対局でも、一手何分以内というルールの「早指し戦」があるが、それでも女流が勝利を博することは滅多にない。
囲碁・将棋ともにその道のプロは棋士と呼ばれるが、将棋の場合、棋士と女流棋士とは別々のカテゴリーに属している。囲碁はそうではない。これが現実なのだ。
もう少し厳密に言うと、将棋界はプロになれる資格を男性に限定しているわけではない。将棋連盟が運営する新進棋士奨励会(以下、奨励会)という組織があり、ここで優秀な成績を収めた者だけがプロになれる、というシステムだ。
この奨励会には、誰か棋士に弟子入りして、その師匠の推薦を受けて入会するのが普通で、はじめからプロを目指す者だけが集まる。
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