那覇市長選 翁長ジュニアはなぜ負けた
Japan In-depth / 2022年11月2日 14時36分
目黒博(ジャーナリスト)
「目黒博のいちゃり場」
【まとめ】
・那覇市長選では翁長雄治候補が敗退し、「オール沖縄」が7市長選挙で全敗する結果となった。
・「オール沖縄」に属してきた城間幹子那覇市長の支持が知念覚候補の勝因だった。
・革新系と保守系の両陣営は、戦略の立て直しと体制の構築が急務である。
那覇市長選(10月23日投開票)で、翁長雄治候補は、知念覚候補に1万票差(約64,000対54,000)で敗れた。辺野古反対派「オール沖縄」は、今年行われた7市長選挙で全敗し、同陣営の将来を危ぶむ声が出ている。
<城間那覇市長の知念候補支持と「オール沖縄」の内部矛盾>
翁長ジュニアの最大の敗因は、「オール沖縄」に属してきた城間幹子那覇市長が、自公が推薦する前副市長の知念候補を支持したことだ。
同市長が、選挙告示日(10月16日)の知念候補出発式で、同候補の背中を両手で強くたたくように押し、選挙戦に送り出す映像がSNSで流れた。その際、城間氏は、今にも泣き出しそうな表情を浮かべる。そこには、城間市長を支えてきた知念氏への感謝と信頼、そして期待と一抹の不安などが入り混じった思いがこもっていたように見える。その一瞬に、城間氏の知念候補支持の固い信念が詰まっている、と感じた人は多いだろう。
▲写真 知念覚候補を送りだす城間幹子那覇市長 出典:金城ツトム沖縄県会議員フェイスブックより
共産党を始めとする革新系市議団が、城間氏を「裏切り」と激しく非難し、市役所に押しかけ、同市長に知念氏支持の撤回を迫った。だが、革新系の強硬な城間市長批判は、むしろ共産党などの硬直した体質を露わにしただけだった。
▲写真 城間幹子那覇市長 出典:那覇市役所HPより
「オール沖縄」は、沖縄自民党の大物であった故翁長氏が、普天間飛行場の辺野古移設反対を共通のスローガンとし、保守と革新双方の妥協をとりつけて、何とかまとめ上げた勢力だ。故翁長氏が繰り返し唱えた「イデオロギーよりアイデンティティ」や「腹八分、腹六分」は、各勢力に対する、自らの政治的主張を抑えてほしい、という強い希望が込められていた。
だが、共産党などは、非妥協的な方針を変えないこともある。国、沖縄県、那覇市、浦添市の4者が合意した那覇軍港の浦添市移設計画に、米軍基地の県内たらい回し、として反対した件は、その典型である。
本来移設反対派だった松本哲治浦添市長が苦渋の決断で歩み寄るなど、複雑な経緯を経て辿り着いた4者合意に反対することは、革新系のイデオロギーを前面に押し出すことになる。それでは、ガラス細工のような協調体制は成り立たない。城間市長から見れば、このような革新系の動きは、「オール沖縄」の本来の姿からかけ離れている。
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