那覇市長選 翁長ジュニアはなぜ負けた
Japan In-depth / 2022年11月2日 14時36分
<自民党の内部対立と非主流保守系の知念氏支持>
一方の自公体制も順調だったわけではない。故翁長氏は、自民党を捨て、共産党などと手を組んだ反逆者である。その故翁長シニアの最側近であった知念氏を自民党が推薦することに、抵抗を感じる党関係者も少なくなかった。
また、保守系には、全体をまとめるリーダーが不在だ。さらに、優秀な人材が活躍できない、自民党組織の悪しき伝統も続く。人材育成を怠ってきたために、今回の選挙で勝てそうな候補は自民党内には見つからず、知念氏を推薦せざるを得なかったのだ。
一方、知念氏陣営は、保守分裂を防ぐために積極的に動いた。城間市長の知念候補支持表明の後押しもあって、様子見だった非主流の保守系が、雪崩を打って知念氏支持を打ち出すことになった。
▲写真 知念覚候補 出典:同氏インスタグラムより
<「オール沖縄」の弱点と知念氏の行政実績>
ところで、なぜ、まだ議員経験も浅い35歳の翁長ジュニアが出馬したのだろうか。知名度が抜群とは言え、余りにも無謀だったのではないか。
実は、陣営内の人材不足もまた深刻だった。主だった保守系や経済人が離脱し、「オール沖縄」は革新色が強まった。しかし、革新系の候補では、幅広い層の支持が得られない。革新系を立てられない以上、保守を自認する翁長氏以外の選択肢はなかったのだ。
革新系が経済政策に弱いことは皆知っていた。だが、コロナ禍でそれが余りにも露わになってしまった。子育てや生活への支援にしても、福祉のバラマキ策しか打ち出せない。革新系に、経済や生活の改善策を期待する人は少ない。
知念氏は、知名度の低さに加えて、スピーチの迫力不足や、魅力的なビジョンを提示できないなどの弱点はあった。とは言え、行政経験が長く、さまざまな局面で業務をこなしてきている。同候補であれば行政を任せられる、と有権者が考えたのであろう。
翁長ジュニアには、若さと「翁長家」の血筋以外に、有権者にアピールする材料はほとんどなかった。議員経験も短かいうえに、行政実績がないことは致命的であった。
今回の選挙で、翁長候補が辺野古移設反対を強調したのに対し、知念候補はこの問題から距離を取った。結果として、那覇市行政に辺野古問題を持ち込もうとする翁長氏と「オール沖縄」の戦略は、市民の支持を得られなかったと言える。
<今後の沖縄政治の展望:両陣営の内輪もめ>
「オール沖縄」は、市長選7連敗を受けて戦略の立て直しを迫られている。だが、反戦平和を基調とする革新政党中心の同陣営に、行政のニーズを把握し、経済政策を含む総合的な政策ビジョンを練り上げることができるだろうか。共産党の影響力が増しているうえに、社民、社大(ローカル政党)、立憲民主も内部対立が激しい。陣営を維持することさえ、容易ではないだろう。
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