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落選の系譜(上)熱くなりきれないワールドカップ その4

Japan In-depth / 2022年11月28日 12時2分

と本気で考える若き戦士であった。


そして彼らが、冒頭で述べた「ジョホールバルの歓喜」の立役者となる。


しかし同時に、若い世代が台頭したことにより年長者のポジションが奪われるというのは、サッカー界においても避けられない現象なのであった。


翌1998年6月2日、開幕直前に代表メンバーが発表されたが、岡田監督の口から発せられた言葉が、日本中に衝撃を与えた。


「外れるのは、カズ。三浦カズ」


順を追って述べなくてはならないが、この大会では出場メンバーとして登録できるのは22名と定められていた。日本代表は、開催地フランスでの直前合宿には25名を招集していたが、言うまでもなく合宿中にけが人が出るような事態に備えてのことである。同時に合宿にまで呼ばれたメンバーの中から3名は代表を外されるということでもあった。


よく知られる通りサッカーは11名で行うスポーツで、国際ルールにより、チームの競技者11名のうち1名はゴールキーパー(以下GK)とすること、GKは他の競技者および審判員と区別のつく服装であること、そして退場その他により7名以下となった場合は没収試合となることが定められている。


岡田監督らが頭を悩ませたのは、22名の出場枠の中で、GKを2名にするか3名にするかという問題であった。とりわけ、初戦の相手がアルゼンチンと決まっていたので、防戦一方となる可能性が高く、その中でGKが負傷する事態も考えられる。


するとGKは3名必要だということになるが、そうなると今度は、攻撃的なフィールドプレイヤーを1名減らさなければならない。


この時、いわゆる攻撃陣として招集されていたのは5名。城彰二、中山雅史、呂比須(ロペス)ワグナー、岡野雅行、そしてカズ=三浦知良。実はこの5名の中で、もっともスピードに恵まれていないのがカズであった。


予想されるアルゼンチンの猛攻をなんとかしのいで、一瞬の隙を突くカウンターに活路を見いだすほかはない。そのような戦略であるとすれば、攻撃陣は消去法でもって、スピードに恵まれていない選手を外すのが現実的な判断となる。


ただ、そのように理解した日本人は、当時ごく少数にとどまっていた。


またしても私事にわたるが、当時まだ東京・板橋の実家で暮らしていた私は、近所の商店街で買い物客の中年女性二人が話し込んでいたのを、今も覚えている。


「カズは、功労者じゃない」「負けるよ、こんなことしてたら」


私の偏見であったなら申し訳ないが、とても日常的にサッカーを見て知見を備えているようには見えない人たちまでが、岡田監督の人選に不満を表明していた。もちろん、これだけで断定的なことを述べるのはよろしくないが、先の「日本中に衝撃を与えた」という表現も、あながち大げさではないと私は考えている。


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