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落選の系譜(上)熱くなりきれないワールドカップ その4

Japan In-depth / 2022年11月28日 12時2分

カズの他に直前でメンバーから外されたのは、北澤豪(注・前回ドーハの悲劇についての記事中では、彼の姓が〈北沢〉と表記されていました。お詫びして訂正させていただきますー筆者)と、現役高校生として初めて代表に招集された市川大祐。


市川の場合は、帯同させて経験を積ませる、という意味合いの招集であったから、当然の成り行き(と言って悪ければ、想定の範囲内)だが、北澤はこの時のことを、


「正直、根に持ってます」


と一度ならず述懐している。


話を戻して、カズの落選については、岡田監督との人間関係に亀裂が生じていたのでは、と見る向きが、当時からあった。長年、日本代表のリーダーとして君臨していた選手だけに、監督に対しても「岡ちゃん」という呼び方をすることがあったとか、なんとか。


そんな理由で……と思われた向きもあろうが、私なりに日本サッカーについての知識を深めるべく、文献はもとより様々な記録や動画も見た結果として、上記の見方も「当たらずといえども遠からず」であろう、と考えるようになった。くだんの「ジョホールバルの歓喜」へと至る過程で、すでに予兆は見られたのである。


ワールドカップ初出場を決めたこの試合、前半を1-0で折り返したものの、後半開始直後から立て続けに2失点。ここで岡田監督は後半18分、ツートップのカズ、中山を城、呂比須と同時交代。


この時、(俺が代わるのか?)とでも言いたげな、カズの怪訝そうな表情も、日本のファンに強い印象を与えた。


しかし、岡田監督のこの策は、見事にはまる。


後半31分、中田からのクロスを城がヘディングで相手ゴールに突き刺し、同点。そして、当時のルールにより、1点入った時点で試合終了となる「ゴールデン・ゴール」方式の延長戦に突入するや、それまで出場機会のなかった岡野が投入されたのである(北澤と交代)。結果は、冒頭で述べた通りだ。


しかし問題は、イランに同点に追いつかれた直後に起きた出来事である。


中田が相手ゴール正面の位置で倒され、フリーキックを得る。この試合、フリーキックに関しては「右で蹴った方がよい場合は中田。左がよい場合は名波」と、キッカーがあらかじめ指名されていた。名波浩は「左足の魔術師」と呼ばれたほど精度の高いレフティである。


しかし、この時ボールを拾い上げてセットしたのはカズであった。これまで自分が日本サッカーを牽引してきたのだし、この試合も自分が決めてみせる。そういう強い意志の現れだったのだろう。


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