今は昔の♪そのうち何とかなるだろう♪ つまずきのトラウマ残る日本経済【2023年を占う!】金融
Japan In-depth / 2022年12月1日 18時0分
神津多可思(公益社団法人 日本証券アナリスト協会専務理事)
「神津多可思の金融経済を読む」
【まとめ】
・今年の日本経済を振り返ると、今の日本には「能天気なムードはほとんどない」。
・2000年代以降、日本のデフレ均衡が根付き始めた。欧米先進国がカンバン方式「ジャスト・イン・タイム」化する一方で、日本は万が一に備える「ジャスト・イン・ケース」の経営を重視。
・日本経済の重要課題はみな2023年に持ち越される。過小なリスク・テイクが解消しなければ、日銀の言う良いインフレにはならない。
気が付くともう師走。今年も全く予想外の連続だった。振り返りついでに昭和にまで思いを馳せると、当時の今でいうお笑いタレントのグループに「ハナ肇とクレージーキャッツ」があった。そのヒット曲に「だまって俺について来い」がある。曲の名より「そのうち何とかなるだろう」という歌詞を覚えておられる昭和世代の方々も多いだろう。作詞は、都知事にもなった青島幸男氏によるものだ。
今の日本には、そういった能天気なムードはほとんどない。何とかなりそうなことでも、色々と論評を加えて判断を先送りしがちだ。リスクをとる気概とそれに対する社会の許容度が低下しているということになるか。掛け声は繰り返し聞かれるのに、なぜリスク・テイクが積極化しないのか。2022年ももうすぐ終わるこの季節に、改めてこの点を考えてみたい。
■ デフレ均衡が根付いたのは2000年代以降
日本経済はデフレ均衡に陥った。そういう表現がしばしばなされてきた。そうだからこそ、前年比で4%に届こうという勢いの消費者物価にも関わらず、金融政策では異次元の緩和が続けられている。もう耳慣れしてしまっているが、今の金融緩和はこの世のものではない緩和なのだ。その修正がまだできないと日銀が言っているのは、デフレ均衡から完全に脱出していないと判断してのことだろう。
2%のインフレが安定的に実現しないと「インフレ均衡」にならないという整理なので、実現のバーはかなり高くなっているのだが、問題の根源にあるデフレ均衡はいつ頃日本に根付いてしまったのだろうか。もう昔のこととなってしまい、話題にも上らなくなったが、21世紀に入っての数年の間は、まだバブルの後始末の最終局面で、世の中の関心の的はそこにあった。過ぎてみれば、2000年代央には一応バブルの後始末は完了したと言えるのだが、当時、リアル・タイムではなかなかそうは実感できなかった。
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