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今は昔の♪そのうち何とかなるだろう♪ つまずきのトラウマ残る日本経済【2023年を占う!】金融

Japan In-depth / 2022年12月1日 18時0分

こうした展開の結果、企業のリスク・テイクは不活発で、物価は上がらず、並行して賃金も上がないという状況が現出し、それでも10年、20年という時間が経過することになった。これがデフレ均衡と呼ばれるものなのではないか。だとすれば、このデフレ均衡は、今となっては多くの人の頭の中でそう整理されている訳ではないだろうが、バブルの崩壊、その意味合いの認識に手間取ったこと、さらに実際の後始末の過程で生じた様々な摩擦といった、過去のつまづきのトラウマがもたらしたことになる。


■ グローバル経済の変容と日本企業の立ち位置


ところが、2010年代以降は、今度は日本以外の世界の状況が大きく変わり出す。中国経済の高成長、その成功故にもたらされた米中の政治的対立、それに加えコロナ禍もあって生じたグローバル・サプライ・チェーンの分断。さらには地球環境悪化に対する認識の急速な高まり。これらの変化は、グローバル企業の経営において、今一度、ジャスト・イン・ケースも重要であることを思い出させた。経営のジャスト・イン・タイム化に支えられた収益改善にもブレーキがかかる。あたかもグローバル経済の歯車が逆回転を始めたかのようにもみえる。


他方、日本企業側では、残念ながら、まだ目にみえて過去のトラウマが払拭されたという証拠は見い出せない。しかし、10月に公表された国際通貨基金(IMF)の世界経済見通しでは、2023年の日本の実質経済成長率は、+1.6%と、米国(+1.0%)、ユーロ圏(+0.5%)、英国(+0.3%)など他の主要先進国よりも高い。これだけで変化を嗅ぎ取るのは無謀だが、珍しいことであるのも事実だ。日本が過去のトラウマから立ち直ったとまでは言えなくとも、彼我の違いが縮小する兆しであると良いのだが。


とは言え、日本経済の重要課題はみな2023年に持ち越される。デフレ均衡の本質的問題が過小なリスク・テイクにあるとすれば、それが是正されなければ、日銀の言う良いインフレにはならない。


2022年度の主要企業の設備投資計画は、現時点でも全般的にかなりの増加となっている。こうした動きもまた、日本企業の新しいリスク・テイクの開始を告げるものであってほしい。


後は金融仲介だが、より生産性の高い分野を拡げていくリスク・テイクを銀行に求めるのはそもそも難しい。新しいビジネスは、大きく成功するものがある一方で、失敗もたくさん出る。そうした投資は、本来、株式を通じて、大数の法則による保険機能を掛けながら行われるべきものだ。貯蓄から投資へとは、そうした金融仲介のパイプを太くすることを意味する。顧客のライフ・ステージに合わせた資産形成を助けるという能力を、金融機関がどこまで高めることができるかが重要になる。


2023年、♪そのうち何とかなるだろう♪とまではいかなくても、がんばっていけば何とかなると、より多くの人が感じられる日本経済になってほしい。


トップ写真:イメージ 出典:iStock / Getty Images Plus


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