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刑法改正で混乱 インドネシア

Japan In-depth / 2022年12月19日 18時0分

このためバリ観光協会や政府、観光創造経済省や法務人権省などは火消しに躍起となっている。


未婚者の婚前性交や同棲はあくまで男女いずれかの両親や兄弟、親族などからの通報に基づいて警察が捜査、摘発に当たる「親告罪」であることを強調しているのだ。


バリ島観光協会やホテル関係者などは外国人のチェックインに際してパスポートの提示が必要になるが「パスポートから既婚か未婚か男女の関係などのプライバシーに踏み込むことはない」として安全は確保されていると必死の説明を行っている。


サンディアガ・ウノ観光創造経済相も「親告罪」であることから「刑法成立後も公共の場でのプライバシーは保証される」と訴え、法務人権省幹部も「刑法の理解が不足しているため過剰な懸念が生じている」として国民や国際社会への重ねての説明が必要なことを明らかにしている。


政府は関係者がインドネシアに駐在する外国人記者を集めて改正刑法も趣旨を説明して誤解を解こうとしている。


「婚前性交や同棲の禁止がプライバシーの権利に影響を及ぼす懸念がある」と指摘した国連に対しは外務省がインドネシア駐在の国連職員を呼び出して「誤った情報を流布した」と抗議をしたほか、観光客が多いオーストラリアやシンガポール、インドに対する説明の徹底を図っている。


■大統領への侮辱、妊娠中絶関与も禁止


このようにインドネシアでは官民を挙げての火消し、誤解の解決にあの手この手で専心しているが、問題を惹起しているのは「婚前交渉や同棲の禁止」ばかりではなく、他にも国民が疑問視する条項が多く存在している。


「大統領、副大統領への侮辱」は最高刑3年が科されるという条項だが、健全な批判が侮辱と恣意的に解釈されると摘発の対象となる。これは報道機関やブロガーなどによる大統領らへの批判を封じ込める狙いがあるとして報道の自由、言論の自由を守る立場から抗議活動が起きている。


また旧刑法でも禁止されていた妊娠中絶だが、新刑法では妊娠中絶に関する情報拡大や勧誘、紹介は医療関係者や福祉関係者などに限定し、それ以外は最高で100万ルピア(約8700円)の罰金刑に処せられる可能性がある。


また呪詛を行い特定の相手を不幸に陥れたりする「黒魔術の禁止、最高刑1年6カ月」も盛り込まれているが、摘発、訴追された場合に何を証拠として他人への呪詛を立証するのか疑問が噴出している。


インドネシアには他人の幸福や健康、結婚式当日の好天などを願う「白魔術」も存在し、庶民の間に引き継がれている民間習俗、伝承でもある。新刑法はこうした「魔術」の世界にも踏み込んでいるのだ。


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