CM史とCM炎上史(上)歳末は「火の用心」 その5
Japan In-depth / 2022年12月20日 19時8分
と書いたこともある。実際には、インドのカレーは日本人好みのカレーとは別物なので、書いた当人が言うのもおかしなものだが、眉唾と言われても仕方ない。さらに言えば平成生まれには通じないネタであっただろうか。
話を戻して、くだんのCMだが、どこの会社のもので誰が出演していたのか、まったく記憶にないのであった。
あらためて調べてみたところ、1964年(まさしく前回の東京オリンピックの年だ)に発売された「特製エスビーカレー」のCMであった。なんでも、初めてプラスチックトレーを使用した固形のカレールウであったとか。
YouTubeはまことに便利なもので、当時のCMまで見ることができた。もちろん白黒放送だが、ターバンを巻いてインド人に扮し、見事な開脚ジャンプを披露したのは芦屋雁之助。放浪の画家・山下清に扮した『裸の大将』シリーズは楽しく見ていたが、こんなこともしていたのか笑。
これはこれで、もちろん面白かったが、同時に疑問も沸いた。
一体なんのCMだか分からないままに、インド人もびっくり、というキャッチコピーだけが半世紀近くも記憶に残ったというのは、果たしてCMとしては成功作だったのか。これがひとつ。
いまひとつは、令和の世でこれが放送されたら、インド人を笑いものにしているとかなんとか、問題にならならないだろうか、ということ。
1970年代の話になるが、手塚治虫が『ブッタ』という漫画を発表した際、うっかり釈尊が左手に食べ物を持っている絵を描いてしまい、
「インド大使館の人から、電話で怒られた」(当人の弁)
という逸話があるのだ。
釈尊ことゴータマ・シッタルーダはネパールのシャカ族の王子なのだが、左手を不浄と見なす風習は共通しているのだろうか。そもそもこれはヒンドゥー教から来ているはずだが。
もっとも、ロンドンで知り合ったインド人にこの話を聞かせたところ、
「それは本当にシャレにならないよ」
と顔をしかめながら言われたこともあるので、笑い事ではないのかも知れない。
いずれにせよ、このCMは話題性に関しては、まず上々だったと言ってよいが、中には逆効果だと言われてしまった例もある。
このCMと同じ時期に『少年マガジン』に『ハリスの旋風(かぜ)』(ちばてつや)という漫画が連載され、アニメ化された。スポンサーは当時チューインガムのメーカーとしては最大手と称されていたハリス食品で、タイトルも名称使用許可を得て決まったのだとか。
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