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アニサキス研究第一人者 相馬中央病院原田文植医師

Japan In-depth / 2022年12月24日 11時0分

 帝京大学の研究チームが2020年に『アレルギー』誌に発表した研究によれば、同大学の救急外来を受診した181例のアナフィラキシー患者のうち、28例はアニサキスが原因だったという。原因としては最も多く、小麦21例、抗生剤13例が次ぐ。これは重症のアナフィラキシーだから大学病院を受診し、原因が判明したのだろう。軽症なら、冒頭にご紹介した症例のように、よほど主治医が優秀でなければ、単なる蕁麻疹として処理されていたはずだ。


 かくの如く、アニサキス症については、まだ分からないことが多い。国際的な認知の高まりと共に、色んな研究が発表されている。例えば、癌との関係だ。2021年、スペインの研究チームは、アニサキスに感染したこと意味する血液中の抗体を用いた研究で、胃がん・大腸がん患者のアニサキス抗体陽性率は、健常人より4.0~6.0倍高かったことを米『メディスン』誌に報告している。この研究から、アニサキス症が胃がん・大腸がんの原因と結論することはできないが、今後の研究が必要だ。がん以外にも、出血性胃潰瘍、好酸球性食道炎などとの関係を示唆する論文も発表されている。


 このような後遺症に注目が集まるようになったのは、一部の患者でアニサキスが無症状で慢性感染することが分かってきたからだ。このことは2018年に始めて報告され、原田医師も今年11月『症例報告』誌に自験例を報告した。その後の調査では、2008年から相馬中央病院で胃がん検診を受けた1500人中3件で無症状のアニサキス症が見つかったという。0.2%の罹患率というのは、公衆衛生的には無視できない数字だ。無症状の慢性感染の臨床像を明らかにし、その対策を講じなければならない。現在、原田医師が取り組んでいる臨床研究だ。


 ここまでお読みになり、魚を食べることが心配になった人もおられるだろう。ただ、きっちりと対応すれば、そんなに不安になる必要はない。なぜなら、アニサキスは、60度で1分の加熱、あるいはマイナス20度で24時間の冷凍で死滅するからだ。


 問題は、刺身など生魚だ。ただ、これも市販の刺身を食べる分にはあまり心配しないでいい。魚の加工施設で、太陽光あるいはブラックライトなどを用いて、肉眼でチェックしているからだ。アニサキスの体調は2-3センチで、慣れた専門家なら見逃すことはない。


 それでも、心配な人は、刺身をよく噛んで食べることだ。口の中でアニサキスを切り刻むことで、アニサキスは死ぬ。原田医師は、「アジのなめろうや、イカの刺身に包丁で切れ目を入れるのは、古くからのアニサキス予防の知恵」という。


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