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CM史とCM炎上史(下) 歳末は「火の用心」最終回

Japan In-depth / 2022年12月24日 18時0分

 問いと答えが噛み合っていないようにも思えたが、カエルの着ぐるみが未成年者の飲酒を誘発しかねないという論理の方が、よほど理解しがたい。


 このような、クレーマーと称される人たちの怖さを示す例として必ず引き合いに出されるのが、2014年に放送されたカルビーのポテトチップスのCMである。


出演は三又又三(みまた・またぞう)。ビートたけしの弟子で、武田鉄矢のものまねなどをレパートリーとする「キモい」系のお笑い芸人だ。


その彼が突如として、公園でサッカーボールを蹴ったり、さわやかな青年を演じたところ、ネットが沸騰し、


「生理的に受け付けない」「このCMが流れている間は買わない」


 というクレームが殺到。なんと3日で放送中止に追い込まれたという。


 CM自体、ビートたけしが監修していて、彼一流の毒を含んだユーモアであったのかも知れないが、視聴者の受け容れるところとはならなかった。前々回に『ハリスの旋風』という漫画・アニメについて述べたが、お菓子のスポンダードはなかなかハードルが高い事業であるらしい。


 最近はまた、フェミニストと称される人たちから、露出度の高い服装の女性が描かれたポスターなどに対してクレームがつく例も多い。性的な画像が不愉快なのだとか。


 たしかに、CMはまだ「見ない自由もある」で済まされるが、駅など公共性が高く人も多い場所に貼られるポスターは、そういうわけにも行かない。


 しかし、女性が肌をさらしているポスターの、一体どこが不愉快なのかは、いささか理解に苦しむ。


 たとえば過去には、浅野ゆう子、早見優、山田優といった面々が、露出度の高い水着で登場するポスターがよく目についた。


 しかしこれは、いずれも化粧品メーカーのポスターで、女性向けの日焼け止めなどを売り込むためのものだったのである。早い話が女性に向けて、こんなスタイルになってみたくはないですか、というコンセプトだったと思われる。よく盗まれて、ほとんどの場合、犯人は男性だったとも聞くが。


 この例でも明らかなように、水着やミニスカートの女性が登場するポスターに、性の商品化という側面がないのかと言われれば、それはあるだろう。それでもなお、私はこうしたポスターやCMも「あり」だと思う。


 端的に言えば、暴力はいけません、と言われたなら誰も反論はできないが、暴力反対という論理でもってプロレスが排撃されるようでは、それもそれで住みにくい世の中になってしまうのではないだろうか。


 もうひとつ、これは明らかにネット社会の弊害で、前に取り上げたYouTuberの再生数稼ぎもそうだが、とかく過激な意見を発信して承認欲求を満たそうとする人がいる。そのような声が、本当に多数意見なのか否か、検証するゆとりもなく「ネットの声」として拡散されてしまうのだ。


 声が大きい人の意見ほど通りやすい、というのは今に始まったことではないけれども、真に民主的な世の中とは、そうしたものではないはずである。


(これまでの連載はこちら。その1、その2、その3、その4,その5、その6)林信吾の「西方見聞録」シリーズ


トップ写真:渋谷のスクランブル交差点でみられる数々の広告ポスター


出典:Photo by Frédéric Soltan/Corbis via Getty Images


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