「21世紀の税制」を望む(下)【2023年を占う!】経済2
Japan In-depth / 2023年1月1日 11時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・防衛費増額の財源をめぐって与党内で議論が紛糾している。
・経済学者トマ・ピケティの「金融資産に課税することで富の再分配機能を取り戻す」という理念は検討すべき。
・拡大する格差を止めるために、消費税の凍結や目的税化など、大胆な税制改革の時期に日本は来ている。
英国議会においては、税制をめぐる論議が紛糾し、ついには首相が辞任に追いやられたと前回述べた。わが国においても、2022年暮れに岸田内閣が、防衛費増額のための原資として法人税を中心とする増税という方針を打ち出したことから、議論が紛糾した。
この増税案の問題点については、清谷信一氏が『軍拡はアベノミクスが失敗だったから』という、とてもよい記事を寄稿しているので(先を越された!笑)、詳細は譲るが、あえて一点だけ付け加えるなら、自民党内から幾度も反対論が起きるのは、
「自民党安倍派=アベノミクス信者と財務省の暗闘が、あらためて表面化した」という要素がある。
もともと財政規律よりも市場の拡大、言い換えれば「赤字上等」のアベノミクスに対して、財務官僚がいい顔をするはずはなかったが、と言って急激に緊縮財政に舵を切ったのでは、国民生活がますます苦境に陥るだけなので、子孫にツケを残すな、といった程度の表現でお茶を濁すのが関の山だった。これがつまり、暗闘と表現した意味である。
その後の経緯は連日報道されていた通り、防衛費の増額は既定の路線であるとしつつ、当面の財源には復興特別税を充填するなどと、お得意の「玉虫色」が提示される体たらく。いや、これは玉虫色どころか、明らかな「使い込み」ではあるまいか。
代表的なアベノミクス信者で、今次の増税案に対しても反対派の急先鋒となったのが、経済安保担当大臣の高市早苗女史であったが、当初こそ「更迭されても仕方ない」と勇ましかったものが、報道によればクリスマス前に開かれた食事会の席上、岸田総理から、
「増税に踏み切るからには、あらかじめ国民に政府の決意を明確に示すことが必要」などと膝詰め談判のような勢いで説得され、最後は締めの挨拶を買って出て、「岸田総理を支えましょう!」となったそうである。これで岸田内閣と安倍派の手打ちとなったのか、未だ予断は許されないが、国家百年の大計であるはずの税制論議を、自民党内の派閥抗争にすり替えて恥じない人たちの姿には、失望という表現でも足りない。
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