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「21世紀の税制」を望む(下)【2023年を占う!】経済2

Japan In-depth / 2023年1月1日 11時0分

消費税をしばらく凍結すべきだというのも、私がかねてから主張するところで、生活困窮世帯への救済策としては、なんとか一時金よりずっと有効だと考えられるからだ。


これまた2021年の統計によれば、わが国における貯蓄なし世帯は、全体の26パーセントに達する。現実問題として年収200万円台の世帯では、貯蓄する余裕などまずないから、この数字自体は驚くに値しない。


言い換えれば、年収200万円台の世帯は、所得のほぼ全てを消費してしまうわけで、単純計算で毎年20万円前後の消費税を支払っている。これを一時凍結することによって、20万円の支援金が受け取れるのと同じ事になるのだ。さらに言えば、消費税はお金をたくさん使う人ほどたくさん支払うわけだから、富裕層を含めた全消費者が恩恵を受けられる。


こういうことを言うと、決まって聞かれる反論が、


「必死で働いて蓄えた内部留保に課税されたのでは、仕事のモチベーションが下がり、結果的に経済活動にマイナスの作用を及ぼすだけだ」


というものである。


言葉を飾らずに述べるなら、儲けるだけ儲けて、その利益を社会に還元しないような会社など、いっそのこと潰れてしまった方が、長い目で見て世のため人のためではないだろうか。


そこまでは言わないにしても、国民の購買力が今以上に低下する前に必要な手段を講じなければ、企業活動の先行きも、どのみち明るいものではあるまい。


そもそも論から言えば、大企業や富裕層がまともに税金を支払わなかったせいで、消費税の税率がどんどん上がっていったということは、データの上からも明々白々なのだ。この議論については、拙著『納税者だけが知らない消費税』(葛岡智恭と共著・電子版アドレナライズ)をご参照いただきたい。


話を戻して、れいわ新選組などは「消費税廃止」を主張しているが、私はこの議論には与しない立場だ。これまたざっくりした説明でお許しを願っておくと、財務省が主張するような緊縮財政策には、国民生活を守るべきとの観点から賛成しないが、と言って中長期的な財政の健全化はやはり必要だと考えるからである。折角の安定した財源を、わざわざ手放すのも賢明な政策とは思えない。


とりあえず、3年程度の時限立法で消費税凍結、その後は税率5パーセント程度に戻して、前述の復興支援特別税と同様、福祉の財源に特化する「目的税化」がよいのではないか。またしても、「それができれば苦労はしない」といった声が聞かれてきそうだ。


しかし今の日本の格差問題を解消の方向に向かわせるには、このくらい大胆な税制改革を考えなければならない。そういう時期に来ているのではないだろうか。


(上はこちら)


トップ写真:大学で講演する経済学者のトマ・ピケティ氏(2014年4月23日 アメリカ・カリフォルニア) 出典:Photo by Justin Sullivan/Getty Images


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