ワイン通=オタク論 酒にまつわるエトセトラ その7
Japan In-depth / 2023年2月1日 7時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・ワインのソムリエに求めることは嗜好、予算、料理に最適なワインを選んでもらうことで、講釈を聞かされることではない。
・日本では戦前、「ワインは甘いもの」と思われていたフシがある。
・今や日本はワイン大国だが、日常的にワインを楽しむ文化が根付いているかは疑問。
今世紀の初め頃のことだと記憶しているが、少林寺拳法の道場に、本業はソムリエだという男性が入門してきた。ワインについての知見を仕入れる好機だと思って、近いうちに一杯やろう、と声をかけたところ、彼の返事はこうであった。
「僕、お酒飲めないんですよ」
目が点になったが、さらに話を聞いてみると、ソムリエは下戸の人が結構多いのだとか。
「お酒が強い人って、なに飲んでもおいしく感じるから、味に厳しくなくなるんですよ」
という理由だとか。言われてみれば、なるほどと思えるところもあったが、そもそも酒を飲めない人が、どうしてソムリエになろうなどと思い立ったのか。
いずれその点をじっくり尋ねてみたかったのだが、彼は残念ながら長続きしなかったので、この根源的な疑問は未だに解決できないままだ。ジャーナリストの悪い癖と言われれば返す言葉がないが、真偽をたしかめられないままというのは、なんとも気分が悪い。
この事もあって、これまた偏見だと言われるのを覚悟して述べさせていただくが、私はワインについてやたら語りたがる人というのは、一種のオタクだと思うようになった。
ワインに詳しいのはれっきとした美徳だが、クソ生意気なソムリエが、
「ビロードのような舌触りが……」
などと言うのを聞くと、
「あんた、いつどこでビロード食べたんだ?」
などと、ツッコミを入れたくなってしまう。こちらはワインのプロだ、というところを見せたいのだろうが、日本語のプロに対しては、もう少し表現に気を配ってもらいたい。まあ、ソムリエの技量は、そうしたボキャブラリーで評価される面があると聞くので、仕事柄、ということは理解できるが。
真面目な話、私がソムリエに求めるのは、こちらの嗜好と予算、それに料理との相性が最適のワインを選んでもらうことで、味見をするより先に意味不明な講釈を聞かされることではない。
まして、やたらワインのウンチクをひけらかしたり、こちらの発言をすぐ訂正するような手合いとテーブルを囲むのは御免だ。レストランとは、店の人も交えて和気あいあいと料理や酒を楽しむ場所であって、知識を競い合ったり論争したりする場所ではあるまい。
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