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メトロカードはなくせない?NY地下鉄事情

Japan In-depth / 2023年2月2日 11時0分

だが、必ずしも、皆が手放しで喜んでいるわけではない。





急激に便利さを手に入れようとするがばかりに、切り捨てられている人々もいる、との声も聞こえてくる。





現在NY住民の全世帯のうち、10世帯に1世帯以上は、銀行口座を持っていない。メトロカードが登場した時にはニューヨーク全体の半分以上の世帯がもってなかったという。いや、正確には持てないのである。こういう世帯の人々は、現在でも現金のみで生活している。(参考:Where Are the Unbanked and Underbanked in NYC? Updated Findings (2017 Data))





それらの、世帯の人々は、銀行のATMカードや、クレジットカードが作れないため、今回の新システム導入による恩恵は何一つ、受けられない。スマホは持っていても支払うための銀行口座がないため使えない。





それどころか、現行のメトロカードシステムが対応している、低所得者、年金生活者や社会保障受給者への割引なども、新しいシステムは、いまのところ、何一つ対応していない。





一口に10世帯に1世帯、というがこれらの世帯は貧困世帯が多い地域に集中している。その地域では10世帯に2.5世帯の割合で銀行に口座を持っていない。結果、サービスの分断化が起きている。地下鉄は毎日欠かせない、生活の足だ。









▲写真 新システム導入後も、まだメトロカードを使い続ける人も多い(筆者提供)





今後、MTAは新システムで使える、誰でも買えるカードを自動販売機などで販売し対応する、としているが、その自動販売機の具体的な設置計画はもとより、販売機のデザインすら発表されていない。





2023年中に新システムに完全移行、としているが、計画は確実に2024年にまでずれ込むらしい。これらの問題などが解決できない限り、メトロカードを予定の時期に完全廃止ということにはならないだろう。









▲写真料金を払わず改札を飛び越える人。5分待てば1人は必ずいる。無賃乗車の背景には貧困だけでない複雑な問題が絡む(筆者提供)





NYは、すでにコロナ明けと言われて久しいが、コロナ禍によって生じた「空白の時間」を取り戻そうとする焦りなのか。以前より加速度的に、世の中が変化しようと動いている空気を感じる。しかし、変化はNYの常なので、それは、コロナ禍からまだ完全復帰出来ていない自分の錯覚だろうか。





仕事帰りに「会話型シート」に身を沈めて、流れる風景を眺めながら、頭の中は過去と今を行き来する。





(了)





トップ写真:NY市を走る地下鉄(筆者提供)




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