今更ながら「新成人」へ 酒にまつわるエトセトラ 最終回
Japan In-depth / 2023年2月2日 18時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・わが国も18歳から成人ということになった。相変わらず20歳の集いで、酔って騒ぐ若者がいる。
・酒は酔うために飲むより、楽しむために飲む方がずっとよい。
・くれぐれも、飲酒のための飲酒にだけは走らないでいただきたい。
昨年4月より改正民法が施行され、わが国も18歳から成人ということになった。
ただ、成人式は大半の市町村において「20歳の集い」と名前を変え、その名の通り前年に20歳の誕生日を迎えた人を対象に開催されている。
また、飲酒喫煙はこれまで通り20歳にならないと認められない。
このため、20歳の集いの会場周辺で、酔って騒ぐ馬鹿者、もとい、若者の姿が相変わらず報道されている。いや、馬鹿者と言われても仕方ないのではないか。
ある情報番組で、キャスターが、苦言を呈する文脈ではあったが、
「気持ちは分かるけど……」
と発言してヒンシュクを買ったりもした。このキャスターの言いたいことも分からないではないが、やはり大人であるならば、酔って暴れるというのは人として間違っているのだということを、きちんと発信するべきだったと思う。
本シリーズでは、飲酒の習慣は文明と不可分であったことを、ここまで様々な例を出して述べてきた。日本酒にせよワインやビールにせよ、おいしい酒が飲みたい、という動機でもって、すさまじいまでの情熱とエネルギーが注ぎ込まれてきたのだ。
ならばどうして、飲酒を悪徳と見なす人が昔から多かったのか、と疑問に思われる向きもあるかも知れない。この点もやはり、歴史を振り返りながら考えるのがよいだろう。
ローマ神話で酒の神と称されるバッカスは、同時に豊穣の神でもあった。これは、より古いギリシャ神話のディオニューソスのコピーだと考えられている。
豊穣を祈って、もしくは祈って酒を酌み交わすのは、神の意志に沿うことであり、酔って気持ちよくなるのは精霊からの恩恵だと考えられていたのである。
したがってまた、酩酊という現象も「精霊のいたずら」と考えられ、現在の感覚に照らしても、割合大目に見られていたフシがある。酔って醜態をさらした者が、しらふに戻ってから、
「俺が悪いんじゃない。酒が悪いんだ」と言い張るのは珍しいことではないが、古代ギリシャ時代にも(ギリシャ語でどう言うのかまでは分からないが笑)、そういう手合いはいたに違いない。
一方では、酩酊・泥酔を神の心に沿わないものと考える人たちも、古くからいた。
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