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今更ながら「新成人」へ 酒にまつわるエトセトラ 最終回

Japan In-depth / 2023年2月2日 18時0分

シリーズの最初の方で述べた通り、キリスト教が誕生した時代は、中東でワイン醸造が大いに広まっていった時代でもあるが、イエスと弟子達が皆、盛大に飲み食いをしつつ談論風発する様子を、ユダヤの聖職者たちは口を極めて罵ったとされている。


イエス自身、飲酒を罪悪視はしなかったが、酩酊は強く戒めていた。


イスラムが飲酒を認めないことは、今では世界中で知られているが、実はクアラーン(=コーラン)には、飲酒を禁ずるという記述はない。


伝承に依れば、預言者ムハンマドのところに弟子の一人が訪ねてきて、


「酒と博打についての神の考えをお聞かせ願いたい」


と頼んだ。この弟子としては、どちらも人間を不幸にするから、という理由で、禁止すべきだ、との答えを期待していたようだ。




結局、その場では明確な答えはなく、紆余曲折もあったのだが、最終的にイスラム法で酒を禁じることになったという経緯である。




唐王朝の最盛期(8世紀初頭)に活躍し、詩仙と称された李白も、酒にはだらしがなく、


「李白は酒飲みだが、酒飲みが皆、李白になれるわけではない」


という格言を生んだ。


わが国でも、江戸時代の狂歌師である蜀山人(=大田南畝)が、やはり大酒飲みでしくじりも多く、ある日とうとう、弟子たちの前で禁酒の誓いを立てさせられた。


その後、弟子の一人が忘れ物に気づいて師匠の家にとって返すと、もう酒を飲んでいる。どういうことですか、と詰め寄る弟子に、さすが狂歌師、


「わが禁酒 破れ衣と なりにけり さしてくだされ ついでくだされ」


と詠んだとか。


笑って済ませられるうちはよいのだが、被害者が出るような案件では、そうも行かない。


近年スーパーやコンビニで、酒の購入に年齢確認が必要になったのも、飲酒運転が厳罰化されたのも、酒がからんだ犯罪や悲惨な事故が後を絶たなかったからだ。


たしかに、酒席でのセクハラ・パワハラはじめ「酒の上でのこと」に対して、過去の日本は少々甘すぎたのではないか、と思う面が多々ある。厳罰化は遅きに失したくらいだ。


「酒は飲んでも飲まれるな」


とは、誰が最初に言い出したのか知らないが、考え方自体は古代ギリシャより連綿と伝わっているのである。


もうひとつ、人生の先輩として、ようやく酒を飲むことが認められた若い人たちに伝えたいのは、


「安酒を飲むな」


ということである。私はビールの代わりに発泡酒を飲むくらいなら、酒を飲まずに暮らした方がよい、と考えている。


この物価高騰のご時世に、とか、前回の話と矛盾していないか、などと言わないでいただきたい。


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