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風船爆弾連想させる中国〝スパイ気球〟

Japan In-depth / 2023年2月6日 11時0分

米軍は破片の回収にあたっており、それらを分析することで、どのような情報を入手しようとしていたかを調査する構えだ。


■ 国務長官、訪中急遽中止、中国は報復示唆


この間、ブリンケン米国務長官は2月3日、中国外交を統括する王毅政治局員と電話で話し合い、「中国の行動は無責任」と難詰、同日夜出発予定だった北京訪問の中止を伝えた。


王毅氏は「中国は常に多国の主権を尊重し、国際法を厳格に順守してきた」と反論したという。


中国外務省は、それまで、気球は中国のものであることを認めたものの、気象研究に用いられる民間気球の自動操縦装置が不十分だったために、風に流されて航路を逸脱してしまったと説明していた。


気球の破壊を受けて中国外務省は2月5日朝、声明を発表、「強い反対と抗議」を表明し、「行き過ぎた行動であり、国際慣行に反する」と米国を非難。そのうえで「必要とあらば、あらたな対抗措置をとる権利を留保する」として報復を示唆した。


中国の気球の飛来はアメリカ国内だけにとどまらない。ペンタゴンによると、3日には別のものとみられる2個目が中南米で発見されたという。 


今回の騒ぎは、米中関係の改善への大きなブレーキになるだけではなく、各国からの中国に対する警戒感にさらに拍車をかける可能性がある。


 気球が実際に偵察用だとした場合、中国はどの程度の情報を入手することができたのか。重要情報を一切得ることができなかったとしたら、中国にとっては割に合わない行動だったかもしれない。


■ 絶望的だった旧日本軍の風船爆弾 


割に合わないといえば、今回の事件が想起させてくれた旧日本軍の風船爆弾は、それどころか、絶望的ともいえる作戦だった。


戦局がいよいよ厳しくなった1944(昭和19)年秋、一矢を報いるために始まった。


気球は直径約10㍍、丈夫な手すき和紙の表面をこんにゃく糊で補強し、下部から吊り索によって爆弾、焼夷弾が取り付けられた。操縦装置はなく、高度1万㍍をジェット気流に乗って最終目的地なしに太平洋を越えた。


作戦開始の翌年、終戦の数か月前までに、約9000個の爆弾が米本土に向けて発射され、北はアラスカ、南はメキシコ北部まで900ー1000個が到達した。完全な形で到達したのは200個程度といわれている。


米側は国民の動揺を防ぐために詳細を明らかに擦るのを避け、どの程度の被害を与えたかは明らかではないが、作戦中止までに、焼夷弾による山火事、爆弾の爆発などで500人の死傷者が出たともいわれている。


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