少子化対策と卵子凍結
Japan In-depth / 2023年2月20日 23時0分
菊地盤(メディカルパーク横浜院長/順天堂大学産婦人科客員准教授)
【まとめ】
・東京都が早ければ来年度から健康な女性の卵子凍結助成を行うとの報道あり。
・卵子凍結はリスクが0ではない。又、将来の妊娠を100%約束できるわけでもない「医療行為」である。
・都の助成は、あくまで可能性のための選択肢への助成だと考えていただきたい。
東京都が早ければ来年度から健康な女性の「卵子凍結」についての費用助成を行うという報道がありました。少子化対策の一環として、とのことのようで、東京都のみならず、少子高齢化が急速に進む我が国においては、可能性のあることは全て行うというスタンスは重要なのでしょう。私は2015年から浦安市と共同で卵子凍結のプロジェクトを行った経験がありますので1)、その経緯を踏まえ、少し意見を述べさせていただきます。
妊娠には精子と卵子、そしてその二つの配偶子が受精することによってできる「胚」の受け皿となる子宮が必要です。精子も卵子も加齢による老化の影響を受けるため、年齢によって妊娠の能力(妊孕能)は男女ともに低下していきます。特に女性の場合には、毎日新たなものが創られる精子とは異なり、卵子についてはその女性の胎生期(お母さんのお腹の中にいる時期)に創られたものを卵巣に保持しているだけですので、加齢の影響を大きく受けてしまいます。
卵子は排卵するときに減数分裂(染色体を半分にする分裂、精子と卵子で半分ずつの染色体をもたせるため)を起こすのですが、老化によりうまく半分に分かれられなくなり、染色体の数の異常の原因となってしまうのです。結果、大きな染色体の数的異常がある場合には妊娠が難しくなり、さらに妊娠しても流産の原因となるのです。
極端な話、閉経後であっても、子宮に大きな異常が無ければ良好な「胚」で妊娠が可能ですので、若年女性の卵子を提供していただくことで、妊娠・出産は可能です。高齢妊娠のリスクもあるため我が国では学会が認めてはおりませんが、実際には海外に出向いて卵子提供を受けてご妊娠されている方々はいらっしゃいます。ただ、ご自身との遺伝的な繋がりのある子供を欲しいと考える場合には、若いうちに体外受精の過程を途中まで行い、ご自身の「卵子」を保存しておくことが必要となります。それが「卵子凍結」であり、近年の技術革新により可能となりました。
通常の体外受精においても凍結保存技術は大変重要です。例えば、多胎(双子や三つ子)を防ぐためには子宮に移植できる個数は限られますので、たくさんの胚が獲得できた際には余剰した胚を凍結保存することが一般的に行われてきましたが、未受精卵の凍結は少し前までは(といっても10年ほど前ですが)難しいとされておりました。
この記事に関連するニュース
-
不妊治療・ART関連市場の動向を調査 2030年には400億円超えの市場規模に
PR TIMES / 2024年6月28日 18時15分
-
<メディア向けセミナーレポート>不妊治療専門「トーチクリニック」が「就労と不妊治療の両立」をテーマにオンラインセミナーを開催
PR TIMES / 2024年6月18日 10時45分
-
ファミワンの専門家アドバイザーの胚培養士 川口が、アジアの生殖医学会「ASPIRE 2024」でポスター発表を行い優秀賞を受賞
PR TIMES / 2024年6月3日 17時45分
-
ファミワンの専門家アドバイザーの胚培養士 川口が、第65回日本卵子学会学術集会にて口頭発表
PR TIMES / 2024年6月3日 17時15分
-
97.98% という驚異的な回収率! RSMC の卓越したデータが日本の不妊治療を刺激する
共同通信PRワイヤー / 2024年6月3日 13時14分
ランキング
-
1奈良・十津川村で土砂崩れ 国道寸断、17世帯20人が孤立
毎日新聞 / 2024年7月1日 21時50分
-
2国会議員の所得、「ポスト岸田」候補では河野デジタル相がトップ…小泉進次郎氏「雑所得」で最多
読売新聞 / 2024年7月1日 18時13分
-
3脳裏に焼きつく救助の光景 「忘れない」消防士の誓い 能登地震半年
毎日新聞 / 2024年7月1日 17時51分
-
4「証拠隠滅といっても過言ではない」鹿児島県警の捜査資料廃棄促す内部文書 県弁護士会が抗議声明
MBC南日本放送 / 2024年7月1日 19時38分
-
5会わせないように…母・田村浩子被告が出した“苦渋のアイディア”明らかに すすきの殺人裁判
STVニュース北海道 / 2024年7月1日 16時14分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)